標的141 ページ48
京子は話しながら、少し照れくさそうに肩をすくめていた。
けれどその声は、どこまでも真っ直ぐで。
「ツナくんがあんなことを言ったのだって、きっと……みんなのことを必死に考えてくれてたからなんじゃないかな。だから──」
少しの間の後、京子が顔を上げる。
その表情に──もう、迷いはない。
「私も、強くなりたい。みんなのために、私のできることをしようって決めたの……!!」
「ああーーッ!!?」
京子が思いを打ち明けた、その時だった。
突然響き渡った叫び声に、ふたり揃って飛び上がる。
この菜園において、声の主はただひとり。
「今の、ハルちゃん……だよね?」
「ッ、行ってみよう!」
嫌な予感を振り切って、私たちは駆け出した。
背の高い野菜畑の向こう、わなわなと立ち尽くすその後ろ姿を見つける。
「ハル!?どうし──」
こちらに気が付き、ただ奥の畑を指さすハル。
……その光景に、私は一目で全てを理解した。
土地の一角を占めるいちご畑。
しかし、肝心の果実は数えるほどしか残っておらず。
畑の中心で口元を赤く染め、何かを頬張ったまま硬直している──黒い毛玉。
「……ラ゛ああぁン゛んんぅホ゛おおぉ……?」
「ぐ……ぴゃ……」
どす黒いオーラを放ちながら、滝汗を流し続けるランボを見下ろす。
そして、その首根っこをむんずと掴み上げた。
「コ゛ルァアアアァ!!何やっとんじゃああ!!」
「だあああ!!はなせバカチンがあ!!」
騒ぎ立てる私たちの元へ、遅れて駆け寄る京子とハル。
荒らされた畑を見つめながら、ふたりは困ったように顔を見合わせた。
「ランボちゃん、これ……ひとりで食べちゃったんですか?」
「そんな、今夜のデザートにしようと思ってたのに……」
さすがにまずいと感じたのか、一瞬たじろぎを見せたランボ。
しかしすぐに顔を逸らし、汚れた口元を尖らせる。
「おいランボ、ダメだろ独り占めなんてしたら!」
「ふ、ふ〜ん。ランボさんねぇ、知らないも〜ん」
……全くもって反省の色ナシだ。
もう一度詰め寄ろうと目を細めた、その時だった。
「知らんったら知らんだもんね!!」
「ッな、」
おもむろに自らの髪を漁り出したランボ。
そこから覗いた“砲口”が、まっすぐこちらを捉えている。
「──ちねぇ!!」
自らの手元で爆ぜたそれを、避けられるはずもなく。
次の瞬間、視界は真っ白に包まれた。
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オウリ(プロフ) - こまりさん» ありがとうございます~!近いうちに続編公開するのでお待ちください! (6月14日 12時) (レス) id: df42654abf (このIDを非表示/違反報告)
こまり - 凄く面白いです!続きが気になります…🤔 (6月14日 5時) (レス) id: fd7a7e37b1 (このIDを非表示/違反報告)
七粍(プロフ) - きーち1さん» お返事遅くなりました…!コメントありがとうございます^^*おかわりどうぞ!!!(笑) (2022年3月27日 21時) (レス) id: d69433a459 (このIDを非表示/違反報告)
きーち1(プロフ) - 展開、設定めちゃくちゃ好きです!!ご馳走様です!!続き早く読みたいです!!おかわりください!!!!! (2022年2月28日 6時) (レス) id: a03c85b354 (このIDを非表示/違反報告)
微々(プロフ) - フランとベルさん» ありがとうございます〜!!^^*私もサクサク更新できるように頑張ります…! (2021年11月18日 11時) (レス) id: d69433a459 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:オウリ | 作成日時:2020年11月29日 23時