標的112 ページ19
＊
「──わざわざいいのに。見送りなんて」
深夜。
今宵は月もなく、敵の目を晦ますには絶好の機である。
ヴァリアー城の裏手に伸びる滑走路には、すでにボンゴレの所有する小型ジェットがひっそりと佇んでいた。
その側、闇に紛れる影が──3つ。
「いいじゃない。念には念を、よ」
「外部からの干渉がないとも限らねぇ。警戒を怠るな」
ルッスーリアとスクアーロの言葉に、はいはい、と頷く私。
……また白蘭が何かしてくるかもしれない。気を付けないと。
「いいか。寄港中は、絶対に機内から出るんじゃねーぞぉ」
「分ぁかってるって。スクアーロ、なんかお母さんみたいだな」
「なッ、」
額に筋を浮かべるスクアーロを、ルッスーリアはいつもの調子でなだめた。
10年経っても変わらぬやり取りに、思わず笑い声がこぼれる。
「待たせたなA。準備ができたそうだ、乗ってくれ」
「！今、行きます」
一足先に乗り込んでいた了平が、そう搭乗口から顔を出した。
……いよいよか。
荷物を持ち直し、ステップを上がる。
機内へ入る手前で、私はもう一度だけ振り返った。
「じゃあ……行くね。ふたりとも、色々ありがとう」
「戦いが終わったら、またこっちにいらっしゃいねぇ！」
「うん、みんなにもよろしく伝えて」
名残惜しそうに手を振るルッスーリアに、ガッツポーズを決める私。
無言のままこちらを見上げるスクアーロにも、力強く頷いて見せた。
……しばらくお別れだが、大丈夫だ。
くるり、と背を向ける。
ゲートを潜り、閉まるレバーを引いた──その時。
「死ぬんじゃねーぞぉ」
ふいに聞こえた声に、目を見開く。
暗闇でも分かる、不敵な笑み。
……それを、言うのか、あんたが。
死ぬなよ、なんて。
まるで、
「ッ生きて、また会おう。絶対に」
気付けば、体が勝手に動いていた。
階段を駆け下り、その腕でふたりを力強く抱きしめる。
彼らの熱を、確かめるように。
これは別れじゃない。
また会うために、行くんだ。
一瞬の抱擁の後、私は間一髪でゲートの隙間へと滑り込んだ。
……離れていても大丈夫。
ボンゴレは、常に──ひとつだから。
閉まりゆく扉の中、私は満面の笑顔で、その言葉を口にした。
「──行ってきます！」
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オウリ(プロフ) - こまりさん» ありがとうございます~！近いうちに続編公開するのでお待ちください！ (6月14日 12時) (
レス) id: df42654abf (このIDを非表示/違反報告)
こまり - 凄く面白いです！続きが気になります…🤔 (6月14日 5時) (レス) id: fd7a7e37b1 (このIDを非表示/違反報告)
七粍(プロフ) - きーち1さん» お返事遅くなりました…！コメントありがとうございます^^*おかわりどうぞ！！！(笑) (2022年3月27日 21時) (レス) id: d69433a459 (このIDを非表示/違反報告)
きーち1(プロフ) - 展開、設定めちゃくちゃ好きです！！ご馳走様です！！続き早く読みたいです！！おかわりください！！！！！ (2022年2月28日 6時) (レス) id: a03c85b354 (このIDを非表示/違反報告)
微々(プロフ) - フランとベルさん» ありがとうございます〜！！^^*私もサクサク更新できるように頑張ります…！ (2021年11月18日 11時) (レス) id: d69433a459 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：オウリ | 作成日時：2020年11月29日 23時
