検索窓
今日:6 hit、昨日:4 hit、合計:58,615 hit

標的95 ページ2

私の体が、ピタリと抵抗を止める。

「ックソ!あのガキ、どこへ行きやがった……!?」
「おいバカ、口には気をつけろ!A様はまだそう遠くへは行ってないはずだ。何としても探し出せ!」

遠くなっていく足音を聞きながら、息を殺す。
酷使されていた心臓は、不自然なほど急激に落ち着きを取り戻していった。

背後に感じる、どこか懐かしい気配。
視界の端にかかる、綺麗な長い髪。

──間違い、ない。

追手の姿が完全に見えなくなり、押さえる手が緩められる。
ようやく顔を上げた私は、銀色の眩しさに目を細めながら、小さく息をもらした。

「……お前だけには、言われたくない……」

静かにしろ、なんて。
あぁ?と眉間にしわを寄せるその表情は、10年経っても変わらず鋭いまま。

「久しぶり……になるのかな」
「ハッ。元気そうじゃねーかぁ、クソガキ」

髪をかき上げ、スクアーロは不敵に笑った。

そんな私たちの頭上で、ぐるぐると飛び続けている蝶。
……忘れてた。私はあれを追って、ここまで……

ぼんやりと見上げる私をよそに、スクアーロは取り出した小箱を開ける。
途端、花に吸い寄せられるかのように、蝶は箱の中へと消えていった。

「気になってたんだけど、何なのそれ」
「んなことも知らねーでここまで来やがったのか。10年前と入れ替わってるってのは、どうやら本当らしいなぁ」

やれやれと肩をすくめる仕草が、若干オッサンくさいのは黙っておこう。

スクアーロが箱をしまうのを、そんなことを考えながら見つめる。
気が抜けたからか、私は思わずあくびをした。

「とにかく、だ。落ち着いたら、とっととここから──」
「あ、うん。待っ、て……あ、れ、」

ジャケットを翻したスクアーロを追いかけようと、踏み出した一歩が──重い。
足だけじゃない。全身が、意識、が……

そこでようやく、異変に気がつく。

かすみ出した視界に目を擦れば、すらりと伸びたスクアーロの腕の先に、何やらうっすらと青色を捉えた。
目を凝らそうとしても、強制的に落ちてくるまぶたがそれを遮る。

「す……く、ぁ……」
「ッゔぉい、何ふらついて──あ」

ぐらぐらと舟を漕ぎだした私を咄嗟に支えたスクアーロが、突然何かに気付いたように声をもらした。

標的96→←標的94



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (176 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
422人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

オウリ(プロフ) - こまりさん» ありがとうございます~!近いうちに続編公開するのでお待ちください! (6月14日 12時) (レス) id: df42654abf (このIDを非表示/違反報告)
こまり - 凄く面白いです!続きが気になります…🤔 (6月14日 5時) (レス) id: fd7a7e37b1 (このIDを非表示/違反報告)
七粍(プロフ) - きーち1さん» お返事遅くなりました…!コメントありがとうございます^^*おかわりどうぞ!!!(笑) (2022年3月27日 21時) (レス) id: d69433a459 (このIDを非表示/違反報告)
きーち1(プロフ) - 展開、設定めちゃくちゃ好きです!!ご馳走様です!!続き早く読みたいです!!おかわりください!!!!! (2022年2月28日 6時) (レス) id: a03c85b354 (このIDを非表示/違反報告)
微々(プロフ) - フランとベルさん» ありがとうございます〜!!^^*私もサクサク更新できるように頑張ります…! (2021年11月18日 11時) (レス) id: d69433a459 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:オウリ | 作成日時:2020年11月29日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。