標的129 ページ36
「…………ワオ」
刹那。
しなやかな体躯が、ピタリと動きを止める。
分身はもういない。
雲雀を取り囲んだそれらは、彼の一撃によって全て雲散した。
ひとり残らず、
──では、本体は?
「何年ぶりかな。誰かに背中を取られるのは」
「……本気じゃなかったくせに……」
今、雲雀の後頭部には、銃口が突きつけられていた。
そのグリップを握る右手に灯るのは──紫の炎。
この作戦は一か八か、咄嗟に浮かんだ最終手段だった。
あの状況で撃ったとしても、勝ち目がないことは明白。
第一、銃を使えばまた暴発してしまうだろう。
……同じ失態を繰り返すわけにはいかない。
なんとか雲雀の虚を突く策はないか。
──リングの異変に気がついたのは、その時だった。
「君こそ、殺気が微塵も感じられないのは癪だけど。いいよ、今回は見逃してあげる」
ゆるりと両手を上げた雲雀から、セーフティモードのままの拳銃を下ろす。
同時に消えた
一瞬でも隙をつくることができれば。
ほぼ賭けだったけど……どうやら命の危機は回避できたらしい。
ようやく緊張感から解放され、私はほっと安堵の息を吐いた。
「まったく。なんだったんですか、いきなり……」
「侵入者を排除したまでだよ。それに──」
「……?」
続く言葉に首を傾げたその時。
破けた障子の隙間から、見慣れた姿がひょこりと顔を出す。
「ちゃおッス」
「……っな、」
「やぁ、赤ん坊」
現れたのは、特注サイズの着流しに身を包んだリボーンだった。
トレードマークのボルサリーノを外した和装姿は、この場とよく馴染んでいる。
どこにでもいるな、ほんと……
彼もまた部外者であるはずなのに、雲雀が襲いかかる気配はない。
リボーンは空間に刻まれた戦闘跡を見やると、つまらなさそうに口を尖らせた。
「なんだ、もう終わっちまったのか。どうだ?感想は」
「答えるまでもないな。この時代の
これだけやっておいてあんまりだ、と睨む私。
雲雀はそんな視線を気にも留めず。
「けど」
ただ、炎の消えた雪のリングを見つめ。
「気が変わったよ。もっと咬み殺し甲斐のある君を見たくなった」
その獲物を見つけた獣のような笑みに、私は背筋が凍りつくのを覚えた。
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オウリ(プロフ) - こまりさん» ありがとうございます~!近いうちに続編公開するのでお待ちください! (6月14日 12時) (レス) id: df42654abf (このIDを非表示/違反報告)
こまり - 凄く面白いです!続きが気になります…🤔 (6月14日 5時) (レス) id: fd7a7e37b1 (このIDを非表示/違反報告)
七粍(プロフ) - きーち1さん» お返事遅くなりました…!コメントありがとうございます^^*おかわりどうぞ!!!(笑) (2022年3月27日 21時) (レス) id: d69433a459 (このIDを非表示/違反報告)
きーち1(プロフ) - 展開、設定めちゃくちゃ好きです!!ご馳走様です!!続き早く読みたいです!!おかわりください!!!!! (2022年2月28日 6時) (レス) id: a03c85b354 (このIDを非表示/違反報告)
微々(プロフ) - フランとベルさん» ありがとうございます〜!!^^*私もサクサク更新できるように頑張ります…! (2021年11月18日 11時) (レス) id: d69433a459 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:オウリ | 作成日時:2020年11月29日 23時