標的41 ページ48
＊
フロントで受け取ったシリンダーキーを、人差し指で回し弄ぶ。
くるくると忙しなく振り回される様は──まるで、今の自分のようだった。
……また、“友達”。
向こうがどう思っていようが、私には関係ない。
いっそ……恨んでくれればよかったのに。
何より、どうしてこんなにも苛立っているのか。
そんな自分が一番腹ただしい。
何度目かのため息を吐きながら、私はホテルのある一室を開けた。
「──あら？」
「……え」
返ってくるはずのなかった声に顔を上げる。
たまらず、私は駆け出していた。
「ルッス姐っ！！」
「んま〜どうしたの！あイタタ」
「ご、ごめん」
飛びついた直後、相手が怪我人だということを思い出し、慌てて立ち直る。
ようやく目を覚ましたことを安堵する私を、ルッスーリアは真剣な面持ちで見つめた。
「ね、争奪戦はどうなってるの？」
……そうだ。
昏睡状態だった彼が戦況を知るはずもない。
私はこの数日間の出来事を、事細かに伝えた。
「そう、今はこちらが2勝……大空のリングもボスのところにあるのね」
「……うん」
改めて振り返る争奪戦。
視線を落とした私を覗き込むように、ルッスーリアが首を傾げる。
「Aちゃん？」
「……ルッス姐、ごめん。私……」
視線の先にある光線銃。
何かを察したのか、彼はいつものように甲高い笑い声をあげた。
「なぁに言ってんの！あなたがいなかったらアタシ、今頃消し炭よぉ！」
「……でも、」
そう口を開きかけた私の頭を、ルッスーリアが豪快にかき混ぜる。
「ありがとう、Aちゃん」
照れくさいような、恥ずかしいような。
それでいて、どこか安心してしまう。
昔から変わらないこの手のひらが、私は好きだった。
「……で、まだ何かあるんでしょう？」
……本当に、何でもお見通しだな。
黙ったまま、ただ私の言葉を待ってくれているルッスーリア。
沈黙が続く。
「…………分かんない」
口をついて出たのは、そんな独り言だった。
穴が開いたような虚しさも。
自分は一体どうしたいのかも。
何も──分からなかった。
「そうねぇ……」
口を閉ざした私。
ゆっくりと腕を下ろしたルッスーリアが、静かにサングラスを外す。
「今はまだ、分からなくてもいいんじゃない？」
穏やかに細められた目元が、こちらに向けられていた。
「大事なのはね、Aちゃん」
──分かろうとすることに、意味があるのよ。
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オウリ(プロフ) - ドクさん» コメントありがとうございます！そう言っていただけるととても嬉しいです…！更新頑張ります*¨̮* (11月1日 23時) (
レス) id: df42654abf (このIDを非表示/違反報告)
ドク(プロフ) - こういうのむちゃくちゃ好きです。更新頑張ってくださいね！（追記 ヴァリアー全員の株がむちゃくちゃ上がった。こういうの大好きです） (10月21日 18時) (レス) id: f0778d3186 (このIDを非表示/違反報告)
俺夢ZUN(プロフ) - 初めまして！ 「私の鼓膜を返して･･････」のパワーワード最高すぎますw (2021年3月27日 20時) (レス) id: 6d2ad26137 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：オウリ | 作成日時：2020年8月27日 16時
