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標的31 ページ38

「──…………う、そ」

目の前の状況に、ただ頭が真っ白になる。
気づけば、赤外線は触れるまでもなく消えていた。

それは、決着を意味していて。

「!おい、待て──」

制止を振り切り、煙の中へと駆け出す。
そんな……そんな、嘘だ。

「ッげほ、げっほ……!どこ、ベル……!」

廊下は見るも無残な状態だった。
未だ舞う粉塵が目に染みる。

頼む、間に合ってくれ。

“あの声”は、確かにスピーカーの向こうから聞こえたんだ……!!

スプリンクラーの水を浴びながら、廊下をひたすら進んだ先。
煙の向こうに、ふと人影が浮かぶ。

ベル?
……違う、あれは──

「獄寺……!?」

おぼつかない足取りで、壁を伝い歩く獄寺。
私の声に驚いたのか、足元の瓦礫に足を取られる。

「ッ、おい!」

私は咄嗟に腕を伸ばした。
倒れ込んだ獄寺をなんとか受け止め、息を吞む。

切り傷、刺し傷、やけど……ボロボロの体。
普段の威勢が、まるで嘘のようで。

「お前……んだ、さっきのマネは」
「……え、」

荒い呼吸を繰り返しながら、ふいに獄寺が口を開く。

「……()()、手放してまで、バカなことすんじゃねぇ……」

彼の視線の先には、雪のリング。

……やっぱり、さっきの声は──

私が何かを言うより先、支えていた腕が振り払われる。
荒い呼吸を繰り返しながら、獄寺はこちらを見据え言った。


「いいか……オレは断じて、認めねーが……10代目に託されたんだ。その意味を、考えやがれ……っ!!」



それだけ吐き捨て、背を向けた獄寺。
再び壁にもたれ、ゆっくりと、仲間の元へ戻って行く。

「……急ごう」

とにかく、早くベルを見つけなければ。

再び瓦礫の中を進んで行く。
そして、ようやくたどり着いたのは──先ほどまで図書室であった場所。

恐る恐る、私は部屋を覗き込み。

「…………ッ、ベル!!」

──見つけた。

部屋のど真ん中、瓦礫に埋もれるようにしてベルは転がっていた。

「ベル、おいベル!起きろ!」

慌てて駆け寄り、無我夢中で意識のないベルを揺する。

……もし、このまま。

嫌な予感に血の気が引いていった、その時だった。

「…………っせーな、キモい顔、すんなし……」
「ベル……っ!!」

前髪の隙間から、薄らとベルの瞳が覗く。

「良かった……生きてたぁ……!!」
「はぁ〜……?死ぬわけ、なくね……?っしし、オレ、王子だもん……」

掠れた声で呟くベル。
その拳には、嵐のリングが固く握られていた。

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オウリ(プロフ) - ドクさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけるととても嬉しいです…!更新頑張ります*¨̮* (11月1日 23時) (レス) id: df42654abf (このIDを非表示/違反報告)
ドク(プロフ) - こういうのむちゃくちゃ好きです。更新頑張ってくださいね!(追記 ヴァリアー全員の株がむちゃくちゃ上がった。こういうの大好きです) (10月21日 18時) (レス) id: f0778d3186 (このIDを非表示/違反報告)
俺夢ZUN(プロフ) - 初めまして! 「私の鼓膜を返して・・・・・・」のパワーワード最高すぎますw (2021年3月27日 20時) (レス) id: 6d2ad26137 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:オウリ | 作成日時:2020年8月27日 16時

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