標的26 ページ33
──熱い。
「Aッ!!」
真っ先に聞こえた声。
……敵の心配なんてするなよ、ツナ。
「っ…………大、丈夫?」
「申し訳、ありません」
あくまで冷静なチェルベッロに笑いかける。
どうやら彼女は無事で済んだらしい。
無事じゃないのは、彼女を庇った私の方だった。
焦げた匂いがする。
高い耐熱性を持つこの隊服でも、さすがにボスの炎の前ではただの布同然か。
焼けた背中の熱を噛み締めながら、私はなんとか身体を起こした。
「……ちょ、ボスぅ……?っはは、あんたが、手ぇ出すまでもないって……」
刺すような痛みに言葉を詰まらせつつ、給水塔の上を見上げる。
……あーあ、なに、やってんだろ。
でもほら、こういうのって心象悪いじゃん?
やっぱボスには毅然としていてもらわないと……なんて。
一体なんの言い訳だ、これは。
「おい。続けろ」
ザンザスはこちらをつまらなそうに一瞥すると、チェルベッロに目配せをした。
「それでは勝負の結果を発表します。今回の守護者対決は、沢田氏の妨害によりレヴィ・ア・タンの勝利とし、雷のリングならびに大空のリングは、ヴァリアー側のものとなります」
その審判にどよめくツナたち。
……これで、大空もこちらのものだ。
「喜べ雑魚共。残りの勝負、万が一お前らが勝ち越すようなことがあれば、ボンゴレリングもボスの地位も全てくれてやる」
圧倒的な自信と、それに伴う実力あっての発言。
彼にはもはや、勝利しか見えていなかった。
「だが負ければ……お前の大切なもんは全て、消える」
「た……大切なもの、全て……!?」
文字通り、消える。
……ツナの大切なもの、か。
「女、いいぞ」
「はい。では次回の対戦カードを発表します」
「明日の対戦は──嵐の守護者の対決です」
その宣言に無邪気な笑みを浮かべるベル。
役目を終えたチェルベッロは、颯爽と姿を消した。
……私も行かないと。
立ち上がろうと息を吸う。
しかし背中の痛みが邪魔をして、上手く足に力が入らない。
「A!」
「おいッ、大丈夫か!?」
その声に、はっと顔を上げた先──駆け寄って来るツナと山本の姿。
「…………っ、来るな!」
ざあ、と勢いを増す豪雨。
突然の大声は激痛となり、傷口が悲鳴をあげる。
「ゔ、ッ──」
「っ……A……」
ツナの心配そうな声。
もう、やめてくれ。
……それが何より苦痛なんだ。
耐え難い空気の中。
私はモスカに抱えられ、静かにその場を後にした。
125人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「原作沿い」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
オウリ(プロフ) - ドクさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけるととても嬉しいです…!更新頑張ります*¨̮* (11月1日 23時) (レス) id: df42654abf (このIDを非表示/違反報告)
ドク(プロフ) - こういうのむちゃくちゃ好きです。更新頑張ってくださいね!(追記 ヴァリアー全員の株がむちゃくちゃ上がった。こういうの大好きです) (10月21日 18時) (レス) id: f0778d3186 (このIDを非表示/違反報告)
俺夢ZUN(プロフ) - 初めまして! 「私の鼓膜を返して・・・・・・」のパワーワード最高すぎますw (2021年3月27日 20時) (レス) id: 6d2ad26137 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:オウリ | 作成日時:2020年8月27日 16時