標的17 ページ24
「──おい」
ドスの効いた声が響く。
顔を上げれば、暗闇に浮かぶ真紅がこちらを捉えていた。
……今行くよ、ボス。
「じゃあね」
「あ……」
冷たい私の声に、もう一度腕をもたげるツナ。
けれど、その手は今度こそ空を切った。
「……お待たせ」
「ハッ、別れ話は済んだかぁ」
スクアーロの悪どい笑みを一瞥し、モスカから隊服を受け取る。
この前ぶっ飛ばされたの忘れてないからな、アホ隊長。
久しぶりのそれに腕を通すと、一瞬、慣れた鉄の匂いが鼻孔を掠めた。
「ほら、もう行こう」
「お前待ちだっつーの」
呆れるベルを横目に、くるりと背を向け歩き出す。
乾いた風の中、私たちは闇へと姿を消した。
*
ヴァリアーが去っていった、その後。
混沌とした空気の中、オレたちはひとまず帰路に着いていた。
上手く状況を飲み込めず、何を話せばいいのか分からない。
……何より、ショックだったのは。
「あいつ、ハナっからオレらのこと……!」
許せねぇ、と拳を握る獄寺。
「スパイだったんだな」
「リボーン、何か知ってんの?」
マフィア関係はこいつが一番詳しそうだ。
……けれど。
「ヴァリアーには謎が多いんだ。内部情報は少ねーし、幹部のひとりは正体すら不明だったが……まさか、あいつがそうだったとは」
再びの沈黙が満ちる。
ふいに「なぁツナ、」と山本が呟いた。
「なんであん時、Aのリングをそのままにしたんだ?」
「そうっスよ!あいつを守護者にしておく必要なんて……!」
「え、えっと……」
獄寺君の言ってることはもっともだ。
……でも。
「なんていうか、うまく言えないけど……Aじゃなきゃダメなのかなって……オレ、どうしてもAが悪い奴だって思えないんだ」
「甘ぇぞツナ。お前が見てきたのは、あいつの演技なんだ」
「分かってるよ!でも……本当に、全部嘘だったのかな……」
「ハハッ。同感だぜ、ツナ」
突然の笑い声に顔を上げる。
そこにいたのは紛れもなく、いつも通りの山本だった。
「スパイとかはよく分かんねーけど、あんな楽しそうに野球やってたのがフリなわけねぇって!」
「んなっ……!こんな時まで野球バカかよ!!」
「山本……」
Aのこと、信じてるんだ。
部員が増えたって喜んでたもんな。
……オレだって、Aが敵だなんて思いたくないよ……
最悪の展開に、ぐるぐると目眩がする。
届かなかった手のひらを見つめながら、オレはまた何度目かのため息を吐いた。
125人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「原作沿い」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
オウリ(プロフ) - ドクさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけるととても嬉しいです…!更新頑張ります*¨̮* (11月1日 23時) (レス) id: df42654abf (このIDを非表示/違反報告)
ドク(プロフ) - こういうのむちゃくちゃ好きです。更新頑張ってくださいね!(追記 ヴァリアー全員の株がむちゃくちゃ上がった。こういうの大好きです) (10月21日 18時) (レス) id: f0778d3186 (このIDを非表示/違反報告)
俺夢ZUN(プロフ) - 初めまして! 「私の鼓膜を返して・・・・・・」のパワーワード最高すぎますw (2021年3月27日 20時) (レス) id: 6d2ad26137 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:オウリ | 作成日時:2020年8月27日 16時