標的16 ページ23
「──……え?」
突き刺さる視線。
チェルベッロの一言で、こちらの空気が僅かに張り詰める。
「っしし、お前いつの間に両方手に入れてんの?」
「Aちゃん、会いたかったわ〜ぁ!早く戻ってらっしゃい!」
「ん?なんであいつらがAの名前知ってんだ?」
「…………A……?」
戸惑う声を無視して、私はポケットからふたつのリングを取り出した。
「自分はヴァリアーの守護者だよ」
「おいテメェ!!どういうことだ!!」
「ちょっ、獄寺……!」
今にも掴みかかろうとする獄寺を制する山本。
しかしそこに、つい先ほどまでの笑みはない。
そんな彼らには目もくれず、チェルベッロは淡々と述べる。
「それは認められません。あなたは唯一、それぞれの機関から後継に選ばれているため、現時点では中立です」
「待て」
門外顧問としての家光の声が、彼女らの言葉をさえぎった。
「オレは雪の守護者を選ぶにあたり、その権利を息子のツナに託した。だが、まだ正式な決定は下されていない。任命の破棄は、今からでも遅くはないはずだ」
いきなり名前を出され、肩を揺らすツナ。
「ゔぉおい!今更何言ってやがる!」
「どうなんだ、チェルベッロ」
「……確かに、問題はありません」
「ちょ、ちょっと待って!」
突然、ツナは慌てた声で割り込んだ。
しばらく口ごもりながらも、意を決したように顔を上げる。
「あの……ちょっと、考えさせて欲しいんだけど……」
「何?」
驚いたように目を見開く家光。
私も耳を疑った。
もちろん返す気はない。
けど……何を、企んでるんだ。
「それでは明晩、争奪戦の際に改めてお聞かせください。並盛中でお待ちしています。さようなら」
困惑する私たちをよそに、チェルベッロはそう残して立ち去った。
……私も行かなきゃ。みんなが待ってるんだ。
仲間の元へ歩き出した時。
ふいに、ぐい、と腕を引かれる。
「A!」
「……ツナ」
顔を上げれば、そこには──この1ヶ月を共にした“敵”の姿。
「あの……えっと、その……」
「ごめんね。楽しかったよ」
「っテメェッ!!」
その瞬間、吐き捨てた私のかかとが乱暴に浮かされる。
胸倉を掴んだまま何も言わない獄寺を、私はただ見つめた。
嘘じゃない。
呑気な普通の中学生活を送れて楽しかった、それなりに。
でも、もう任務は終わりだ。
獄寺は苦虫を嚙み潰したように舌打ちを飛ばすと、ようやくその手を振り払った。
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オウリ(プロフ) - ドクさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけるととても嬉しいです…!更新頑張ります*¨̮* (11月1日 23時) (レス) id: df42654abf (このIDを非表示/違反報告)
ドク(プロフ) - こういうのむちゃくちゃ好きです。更新頑張ってくださいね!(追記 ヴァリアー全員の株がむちゃくちゃ上がった。こういうの大好きです) (10月21日 18時) (レス) id: f0778d3186 (このIDを非表示/違反報告)
俺夢ZUN(プロフ) - 初めまして! 「私の鼓膜を返して・・・・・・」のパワーワード最高すぎますw (2021年3月27日 20時) (レス) id: 6d2ad26137 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:オウリ | 作成日時:2020年8月27日 16時