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｢…ごめん急に追い出して｣
顔を洗って適当に髪を結わえてから居間に戻ると、矢花くんは嶺亜くんに毛布をかけ直してあげていた。
｢いいえ、今日は休み？｣
｢うーん、休みだけど次のコンクールの作品やらないと｣
｢……じゃあ今から大学行くの？｣
｢うん、たぶんこんぴと嶺亜くんはしばらく寝てるだろうし｣
｢だね、毎回そうだから｣
｢あはっ、だね。｣
少し気まずそうにしながらも、ちゃんと話してくれる矢花くん。
私も普段はこんなに人と話す方じゃないけど、初対面で痴態を晒したということで妙に開き直って話している節がある。
｢ていうかAさんさ｣
｢…それやだわ｣
｢へ？｣
｢Aさんって、他人じゃん。AとかAとか、せめてAさんとか。苗字にさん付けはなぁ｣
昔から苗字にさん付けで呼ばれるのが好きじゃない。なんとなくだけど。
私がド直球に文句を言ったから矢花くんはめんどくさいというような顔をした。
｢…ははあ｣
｢今面倒くさって思った？｣
｢いえ…じゃあ、Aさんで｣
｢…はい、矢花｣
｢結局矢花じゃん｣
｢矢花はベースやってんでしょ？｣
｢バンドではね｣
「…っぽいかも。」
「それ誉め言葉として頂戴しますけど」
「いいよ、褒めてるから。」
ううん、と嶺亜くんがうるさそうに唸ったから、私は外に出る準備をする。
｢…頑張ってね｣
｢うん、ありがとう。矢花は今日どうすんの？｣
｢俺は夕方からバイトですよ｣
｢そっちこそファイトじゃん｣
そんな話をして、私たちはこんぴの部屋を出た。
それから、矢花とは会ったら少し話したり、嶺亜君やこんぴたちと一緒にご飯を一緒に食べたりする仲になった。
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作者名：雪 | 作成日時：2022年9月24日 0時
