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「お前ーーー！！いい絵描くなーーーやっぱ」
締切の前日、村上さんがやって来て私の絵を見てそう言った。
あ、私の絵褒められてる。少し嬉しい。
この前まで嫌いだったけど、今は好き、村上さん。
「ちゅーかこれモデルおるやろ、誰や」
「村上さんに言っても分かんないし教えません」
「冷たいなー、彼氏か！！」
安直。
「安直」
「お、おっ、お前オブラートに包めや」
「私の友人です。この人の弾くベースが好きだったからもっと好きに表現したくて描きました」
この人の弾くベース、というより、ベースを弾くこの人を描いたけど。
過去一好きな絵になったという満足感で、今は世界がとてもキラキラ輝いて見える。
矢花の顔自体は描いていない。
あの人は前髪が重くて目が隠れがちだったから髪の毛をかなり意識した。最初は音の力強さと矢花の激しい演奏スタイルを意識して強めの色で彩度も高くしようと思ったけれど、インパクトに欠ける気がした。
この後訪れるであろう曲の終わり、終わった時の不安、焦燥感。迫り来るそれらを描きたかったから、色合いはミックスさせた。
暗く淡い色と、明るく濃い色を、絶妙なバランスで組み合わせられた、と思っている。つまり自画自賛。
「これ、写真でも撮ったんか」
「いや私も演奏してたから撮ってないです。その時私が見たまんまを」
「…記憶か。」
村上さんは急に黙り込んで私の絵をまたじっくりと眺め出す。
「…お前、この絵の奴に描くこと言ったんか？」
「言ってない」
そういうと村上さんは目を真ん丸にして「はぁ！？！？」と大きい声を上げた。
「お、お前、相手が出典拒否したら無理やぞ！！」
「ないない、させない。」
「…言ったな？？今きいたからな？」
「させるわけない。」
全然返してなかったLINEを開く。
〈ねえ矢花〉
〈完成した絵を見せてあげましょう〉
〈一番最初のギャラリーです〉
すると、珍しくすぐ既読マークが付いた。
〈本当ですか！！〉
〈かなり嬉しい、マジで観たいですね〉
〈いつ行けばいい？〉
わくわく。
私はきっと矢花よりわくわくしている。
〈今日1日アトリエいるからいつでもいいよ〉
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作者名：雪 | 作成日時：2022年9月24日 0時
