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翌朝、アラームを何度か止めて完全に目覚めたのは11時過ぎだった。
「…あ」
乾いた眼を開けてロック画面を見ると、見慣れないギターアイコンの通知が二個。
〈おはようございます〉
〈今起きたんでいつでも出れまー−す〉
どちらも20分前に来ていたメッセージだった。
アプリを開いて〈おはよ〉〈あと10分で出れるから10分後下で〉
と送る。
「…ギター、久々だな。」
手、覚えてるかな。
顔洗って歯を磨いて、伸びた髪を適当に後ろで縛った。
この間５分。
バタバタとパーカーとジーンズに着替えて、上からダウンジャケットを羽織る。
昨日押入れから出しておいたエレキギターとショルダーバッグを持って、私は外に出た。
うん、ぴったり10分。
矢花だし、いいか、と思っていつも通り適当な恰好と顔で出てきたけど、大丈夫だろうか。矢花は休
日お洒落するタイプなのかな。
なんて今更気にする。
けれど外に出て階段を降りたら、いつもの矢花だった。
柔らかめの黒い革ジャンと、中に赤のチェックシャツと黒Ｔ、赤いベンデイビスのニット帽といつものジーンズという立ち姿だった。
あと、背中にはベースをしょっていた。
「あ、おはよ」
「おはよう」
「本当に10分で来るとは思わんかったわ」
「私は時間守るタイプの人間だからさ」
「…見えない」
「ねぇ悪口」
「すまん」
寝起きだからか、いつもより声量が省エネで表情もあまり変わらない。
そして多分私も同様である。
お互い一定のテンションでポンポン会話が進んでいって、不思議と居心地の良さを感じる。
こんぴとはまた違った、居心地の良さ。
「今日大学の近くの俺らがいつも使ってるスタジオ行くけど、いい？」
「あ、うん。おじゃましますわ」
いつもだったら渡る信号を無視して、角を曲がる。
居酒屋やbar、ライブハウスが並ぶ街を通ってしばらくしたら、矢花が立ち止まった。
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作者名：雪 | 作成日時：2022年9月24日 0時
