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「嶺亜くんとはやっぱ同じ学部だから仲良くなったの？」
「うん、私の絵を見て去年話しかけてくれたんだ。私の嶺亜くんの絵を見て、話しかけたいと思ってたから嬉しくて」
「へえ」
「それで、話してたら音楽もやってるってわかって、こんぴが最近嶺亜くんとバンド組んだっていうから…」
「あ、あの時期か。入学して半年くらいだった時」
「そうそう。矢花の話はそこから聞くようになって〜ベースがやべえ奴でって」
「おいおいおい間違いはないけど」
「あは、間違いないんだ。あと、琳寧くんとか、他校にいる本�發�んとか…高校生の子もいるんでしょ？」
「そう、ドラムの大光っていう。まあ、それは置いといて。Aさんの話聞かせてよ、話してくれるなら俺聞きたい」
そういう矢花からは、変な緊張感も、気持ちの悪い優しさも、変な好奇心も感じない。
彼の柔らかい声のせいだろうか、それとも本当に純粋に私のことを心配してくれているのだろうか。
笑顔でも真顔でも無く、私を見つめる矢花に対して
私は自然と、世間話をするように口を開いた。
「…私の絵は去年まで結構評価されてたんだ。自分が描きたいものを描いて、それが周囲からいいね！って評価されて、また描いて、私はこれをずっとやりたいって思ってた」
「だけど、今年に入ってから何故か自分の描いてる絵が気持ち悪く見えるようになって」
話しながら思い出す、画材やラフ画、完成した絵が、また気持ち悪さを思い出させた。
「描いてると線が全部歪んで見えて、色も汚く見えてきて、思っていることが絵に全部出ちゃうような感じ。」
きっとこれはスランプというやつなんだろう。
クリエイティブな事をしている人たち全てがなる可能性のあるスランプ。
けれど、なぜかそれは待ってもらえないのだ。
「だから私今絵描きたくないんだよね、楽しくないから。でもそう言ったら大人に怒られた」
「あのスーツの？」
「うん、見たの？」
「前学祭で…見かけた」
何か思い出しながら矢花が言う。
きっと私の絵のことについて教授と色々話していたのを矢花は聞いたんだろう。
「どーせグチグチ文句言いながら見てたんでしょ〜あの人、前のが良かったばっか言うくせになんでもいいから描けとか言うんだよ」
「…好きに絵描きたかったのに、絵を描くことも嫌いになりそう」
ため息のように漏れた本音。
言葉にしたら本当にそうなりそうで、怖かった。
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作者名：雪 | 作成日時：2022年9月24日 0時
