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「誰が？」
私は振り返って、そう言った。
顔を見たら、去年何度か話したことのある教職コースの子達だった。
振り返ったことに驚いたのか固まって、どうする？とお互いに目配せをしている。
「聞こえてるから、話すなら別の場所で聞こえないように話して。一応人だし、気になるわ」
それだけ言って、私はまたノートに向き合った。
バタバタと荷物を持っていく音が聞こえたから、遠くの席に移動したのだろう。
それを見ていた一部の生徒たちは、またひそひそと噂話を始めた。
さっきの女の子たちが言った、「キモイ」という言葉が頭を巡る。
間違いない。キモいよね、私の今の絵は。
ノートを破りたい衝動に駆られ、私は急いでページを捲った。
それから数日、何も思いつかない私は
半ばヤケクソになった。
ここでにらめっこをしててもしょうがないと思い、散歩したり電車で遠い場所に行ってみたり、なんとか刺激を受けようとしたが、私の心は微動打にしなかった。
11月の海は綺麗だった。
だけど、綺麗なだけだった。
綺麗なものを見ても、額縁越しに見ているようで、私は何を見ているのか、海を見ている自分を見ているのか、訳が分からなくなった。
嶺亜くんとこんぴは、最近バンドの練習と単位取得の為忙しそうにしている。多分矢花も。
みんなと一緒に行ったらまた違ったのかな、なんて思ってみたりするけれど、それも違う。
私の問題だ。
私の心の問題だ
アトリエに戻ると、村上さんが来ていた。
ただ立って真っ白いキャンバスを見つめている。
これはきっと、怒っているかあきれている。
「なんやどこ行っとったんや」
「…気分転換です」
「んで、気分転換したか」
「してないです」
「…お前、これなんや」
真っ白いキャンバスを指さす村上さん。
私は屈辱を殺すように息を吐く。
「…描けないです」
「描けないちゃうやろ、なんでもいいから描かんとあかんねん」
「描けないです！！」
叫び声に近かった。けれど我慢できなかった。
「…なんでや。」
「私が今何を描いても、自分が受け入れられません。そして周りもそうです。」
「…」
「前の方が良かったって……」
「分かった、じゃあもう何も言わん。」
村上さんはため息をついてアトリエを出ていった。
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作者名：雪 | 作成日時：2022年9月24日 0時
