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嶺亜くんが出してくれた車に乗り込むと、いつも嶺亜くんがつけている香水の香りと車特有の匂いと、少しの画材の匂いが混ざって、妙に安心した。
音楽は嶺亜君のすきなロックミュージックがガンガンかかっている。
私は遠慮なく椅子を倒して足を広げてもたれ掛かる。
｢…ありがとうございます｣
｢なに急に、気持ち悪いよ｣
｢…｣
お礼言い損じゃん。
嶺亜くんはいつもこうである。
色々世話になっている先輩だけど、何かと毒舌なのだ。せっかくの可愛いお顔が台無し…ではない、むしろ似合う。
｢まあ今のAは気負い過ぎプラス考えすぎ、あと自己肯定感低すぎ｣
｢そう思うならもっと優しくしてくれますかね…｣
｢してんじゃんこうやって。なに？この寒い中下ろしてやろうか？｣
｢申し訳ありませんでした｣
｢まあいいよ、それより今日こんぴーの家で鍋するけど来るでしょ？｣
｢…いかな｢来るでしょ？｣はい｣
余りの圧に押されてはいと答えると、嶺亜さんは横顔でも分かるくらいにこっと可愛らしく笑った。
｢こんぴ、全然会ってない｣
｢お前、LINEも通知切ってるでしょ。｣
あ、そういえば。と思ってLINEを開くと、通知がかなり溜まっていた。
こんぴからのLINEは3件
〈お前最近帰ってる？〉
〈無理しすぎるなよー〉
〈今嶺亜くんが迎え行った〉
あ、これ30分前だ。
嶺亜くんからも
〈ちょっとー〉
〈LINEくらい返しなよね〉
〈まだ作業部屋いんの？〉
〈飯食ってないの？〉
〈今から行くから〉
｢…ごめんなさい｣
｢まあいいけど。あんま追い詰めんなよ｣
｢うん、そうしたいね｣
｢…着いた。｣
いつものボロっちいアパートの前にとまる。
よくある二階建ての学生用ボロアパート。
嶺亜くんは車を近くの家に停めてから来るそうで、私は先におりた。
嶺亜くんは実家通いだからこうして車をよく出してくれるんだ。
｢ありがとう嶺亜くん｣
｢うい。酒とか色々持ってくるから行っといて｣
｢はーい｣
こんなのも久々だ。
ここ数週間まともに友達とも会ってなかったしご飯も簡易食しか食べてなかった。
しばらく絵の事は忘れて、楽しもう。
そう思ってアパートの階段を上がった。
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作者名：雪 | 作成日時：2022年9月24日 0時
