標的13 ページ13
え？と。
思う間もなく、膝から崩れ落ちる。
「ァ……ッう゛、あ゛」
痛み。
「ッごふっ、」
溺れたような感覚に陥り、むせ返る。
床に赤黒い血溜まりが広がる。
「僕はあの時、死にかけのあなたを見つけました」
あの時＿＿夢の中でのことだろうか。
ひゅ、ひゅ、と浅い呼吸を繰り返す私を後目に、骸は一人語り続ける。
「正確には、転落により脊髄を損傷。精神のみが体外に抜け出した状態でした。打ち所が悪かったんですかねえ」
「な゛、ン゛」
「本来、器を失った精神はそのまま消滅します。ならばなぜ、あなたは生きているのか？答えは簡単です」
骸はしゃがみ込むと、私の首を締め上げこう言った。
「繋ぎ止めた＿＿あなたの身体を造り、修復したのは、僕ですから」
ぶわ、と鳥肌が立つ。
「おっと、まだ気をやらないで下さいよ」
再び骸が指を鳴らすと、痛みは少しだけマシになった。
「危害を加えたわけではありません。あなたの身体を補っていた幻覚を、一時的に解除しただけです」
どうやら首だけでなく、全身を損傷していたらしい。
もはやどこが痛むか分からない。
「あの時は精神世界だったので、どうすることも出来ませんでした。なので、
そう言って、骸はどこからか三叉の槍を取り出す。
……あの時胸にぶっ刺されたのはあれだったのか。
「どこで情報を手に入れたのか……あなたはこの槍がどういったものか存じているようですね。その様子だと、僕の目的も筒抜けのようだ」
「わたし、を……乗っ取る気、だった、んだ？」
その通り、と骸は笑う。
「運命共同体だ、と言ったでしょう。あなたは僕に生かされている。僕が死なない限り、あなたも死ぬことはない」
「……頼んで、ない」
「頼まれたってしませんよ、こんなこと」
声が震える。
逃げろ。
這うように、後ずさる。
「無駄です」
さっきの痛みの衝撃で、思うように身体が動かない。
ここへきてようやく思い知る。
骸は……敵だ。
「君はもう、どこまで逃げても手の平の上だ」
甘かった。
トリップしたから。
原作を知ってるから、何か変えられるんじゃないかって。
そんな力は……ない。
すぐ後ろは壁だ。
耳鳴りがする。
獲物を追い込んだ獣のような鋭い双眼が、私を捕らえる。
骸の背後に一瞬、ドス黒いものが揺らぐ。
耳が触れる程の距離で、優しく、優しく囁く。
「……可愛がってあげますよ」
首元に、ツプ、と痛みが走った。
あなたの死ぬ気の炎の属性は……
雷
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 214人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「トリップ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
佐乃(プロフ) - 白露さん» ありがとうございます！夢主ちゃんの寝床はそのうち出るかもです……笑 (2019年7月27日 20時) (
レス) id: 0f99d84b60 (このIDを非表示/違反報告)
佐乃(プロフ) - サクラさん» ありがとうございます！ (2019年7月27日 20時) (レス) id: 0f99d84b60 (このIDを非表示/違反報告)
白露(プロフ) - 面白いです。続きが楽しみです。 ヒロインちゃんは結局どこで寝泊まりしてるんだろうw (2019年7月27日 17時) (レス) id: 5376065075 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - 物凄く面白いです。 (2019年7月27日 16時) (レス) id: fa117b4385 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：佐乃 | 作成日時：2019年7月26日 19時
