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「……いい先生、ですか」
「そうですよ。私のことまでこうやって気をかけてくれるんですから
……でも、そうですね。今日は確かにあまり熱が入ってないみたいなので、また今度にします」
言うが早いか、Aはノートから下敷きを引き抜いて筆記用具を片付けにかかる。
「先生は、浅野さんが
「……？」
膝に置いた鞄を目に俯いていたAが、殺せんせーの言葉に上向けた瞳をきょとんと丸めた。たった今言った筈の賛辞を聞かず心待ちにしている言いようは、彼女と上手く会話が噛み合っていない。
しかし、それを言及する前に殺せんせーのつぶらな瞳に言葉が詰まる。満月に浮かぶ黒点は微塵も迷いを見せていない。自分とは正反対だ、と思ってしまったAは一瞬閉ざしてしまった口を開いた。
「わかりました。何か困ったことがあったら、話しますね」
理解の及ばなかった不可解な部分への返答を削り、絞り出したのは無難な答えだった。にこにこと笑んだまま、机を綺麗さっぱり片付けたAは、かたんと控えめな音で椅子を引く。足が擦れる床を軋ませた生徒を見据える教師の表情は、普段通りか何か思惑があるのか変わらず三日月を浮かべたままだった。
失礼しました、と穏やかなと声色と共にAは教員室の扉をからからと閉じた。暗雲の見え始めた窓の外に、彼女の赤紫が淀む。
────────
母の話は、三者面談のあったその日から始まった。仕事で遅れて帰ってきた頼子の乗る車の音に真っ先に気付いたAは、一抹の緊張を抱えながら彼女を出迎えた訳だが面談前と変わらない様子に困惑と安堵に胸中で息を吐いた。
最も、それは夕食が終わるまでの束の間のことだったのだが。
食器洗いを手伝おうか、何となく気まずいままリビングに腰を据えていたのがいけなかった。ダイニングテーブルを前に手持ち無沙汰に教科書に目を通していたAの真向かいに座るなり、頼子は語りかけるように話を始めた。繰り返されたのは、放課後の自主勉強中にも集中を逸らした言葉ばかりだ。
特別だから。相応しい場所があるから。
そう説く頼子の弁は、面談で辛うじて宙ぶらりんになっていたAがしがみついた糸から、彼女の手を優しく引き剥がしていく。振り払う術も手を差し伸ばす先も少女は知らないまま、そっと握りこぶしを作るだけだった。
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窓(プロフ) - 星咲夜空@スマホさん» コメントありがとうございます！これから浅野さんがどうなるのか、他のキャラクターとの絡みも含めて楽しく読んでいただけるよう更新頑張りますので、気長にお待ちください！！ (2022年6月26日 19時) (
レス) id: 1c42528565 (このIDを非表示/違反報告)
窓(プロフ) - カミレさん» コメントありがとうございます！浅野さんがこれからどうなるのか、私自身決めかねている部分もありますが最後まで楽しんでいただけると幸いです……！！ (2022年6月26日 18時) (レス) id: 1c42528565 (このIDを非表示/違反報告)
星咲夜空@スマホ(プロフ) - あ、浅野さんー！が、がんばれー！これ続きが気になる……どうなるのこれ…… (2022年6月1日 22時) (レス) @page21 id: 2efeb2cec1 (このIDを非表示/違反報告)
カミレ(プロフ) - 胸が痛いです。すごく、すごく、浅野さんの気持ちが痛いくらいに伝わってきます。がんばって浅野さん！！ この作品本当に大好きです！丁寧な描写がすごく好きです！ (2022年5月31日 9時) (レス) @page20 id: ac25ff3042 (このIDを非表示/違反報告)
窓(プロフ) - 猫さん» 遅れてしまってすみません、コメントありがとうございます！更新が滞っていますが楽しんでいただけると嬉しいです！ (2022年4月19日 22時) (レス) id: 1c42528565 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：窓 | 作成日時：2022年3月22日 20時
