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「何、お兄さんら？ 観光が目的っぽくないけど」
前方の男達──こちらは三人で待ち伏せていたようだ──に、一歩踏み出したカルマが挑発するような言葉を吐く。初めにAの声を遮った男がばちと視線をカルマの先、警戒するように見据える最後尾の薄い赤毛に合わせた。彼の声につられて前に向き直っていた彼女の眉間の皺が、嫌悪を孕んで僅かに跳ねる。
「男に用はねえ。女置いてお家に帰────」
にたついた男が言い終えるのを断ち切って、素早く動いたのはカルマだった。ごしゃ、と鈍い音を立てて喋っていた男の顔を鷲掴みにした手が石畳に叩きつけられる。体格や人数の差に怯まず手を出すところは、踏んできた場数の違いが伺えた。
「ほらね渚君、目撃者のいないとこなら喧嘩しても問題ないっしょ？」
「ああぁ校外で暴力沙汰なんて一番避けたかったのに……」
呑気に渚に話しかけるカルマの後ろで、Aが小さく頭を抱えた。四班は勿論のこと、E組の中でも抜きん出て対人戦闘について心得ている二人がどこかしまらない空気の中、カルマに名を呼ばれた渚があっと声を上げる。
彼が指さした方向から、今度は刺すぞ！ と威嚇しながらナイフを突き出す男に傍に停めてあった自転車のカバーを剥がしたかと思うと相手に被せて勢いよく突き飛ばした。
カルマのおかげで優勢に見えたが、数の利で優る学ランの不良達がそのまま大人しく黙っているわけもない。刺すつもりもないのに？ と煽る彼の声を聞くAが、背後からぐいとブレザーの袖を強く引かれた。
「な、んっ」
リーダー格らしい不良がどこか品のない笑みで振り返ったAのグレーのジャケットに皺を刻む。一番近い距離にいた彼女がまず捕まえるのにちょうどよかったのだろう。
が、不良の誤算は真っ先にAに手を出したことだった。
「あん時は見なかったがもう一人上玉がいるじゃねー、か……!?」
そう言いかけた口が、一瞬余裕を忘れて怯む。掴まれていたのが片腕の上着だけだったのを幸いに、強引にAが両袖をジャケットから引き抜いたのだ。
するりと抜け出した体に動揺している隙を突いて、頭一つ分上の顎に右手で掌底を食らわせた。
「刃物まで出されたんだもの。ここからは正当防衛、ねっ」
顎の固い感触をそのままに真上へ叩き上げ、翻るスカートを左手で軽く押さえながら自分のブレザーごと男の腕を強く蹴り上げる。その反動で、Aは呻く不良から距離を取った。
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窓(プロフ) - 星咲夜空@スマホさん» コメントありがとうございます。糧とまで言われて本当に嬉しいです……！ 今までほどの更新頻度は保てないですがお付き合いいただけると幸いです！ (2021年9月4日 1時) (
レス) id: 1c42528565 (このIDを非表示/違反報告)
星咲夜空@スマホ(プロフ) - 更新ありがとうございます。この作品の更新が生きる糧です、これからも無理のない範囲で頑張って下さいませ！ (2021年9月4日 0時) (レス) id: 2efeb2cec1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：窓 | 作成日時：2021年9月2日 20時
