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は、と短く息が乱れているのは、緊張のせいだ。
柄を握った両手の震えが止まらない。体重をかけて押し込んだ刃の感触は曖昧だ。
武者震いだとか、恐怖に打ち震えているわけでは決してなかった。
覆い被さるのは、一度で目標を倒さなければいけない、そのプレッシャーだけだ。
この一度に全てを賭けた、つもりだった。
もしこの一度が実らなかったら、自分がどこに居るべきなのか、何もわからなくなる気がしたから。
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Aの背中しか見えない位置のカルマの時間が、漸く動き出した。それと同時に、何が起こったのかも脳が遅れて理解する。
何を使ったかはわからないが、Aの細工した頭髪に触れた殺せんせーの動揺した隙を突いて、彼女が先程懐にしまっていたナイフで先生を刺したのだ。
と、ここまでは状況を整理できたが、後からじわと湧いた汗がカルマの頬を伝う。
彼がAをここに連れてきたのは偶然だ。烏間から言伝がなければ、彼女の怪我をカルマが覚えてなければ成立しない。それなのに、全て図ったかのように流麗さまで以て触手の破壊まで至った。
普段暗殺に積極的ではないAだったが、あれは用意周到に好機を狙っていたのだ。
叢に潜む虎のように、きっとあのルビーの双眸も瞼の下で眈々と待っていたのだ。
「あ、さのさん」
はずみで口から出て躓いた言葉が、余計に喉を乾かせる。無理くりに唾を呑んだカルマは、立ち上がろうとしてそこで呼びかけたクラスメイトの重力に気付いた。
殺気とは明らかに異質な空気を、纏っている。つい数秒前に呑気に寝ていた(実際には寝たふりであったようだが)彼女と同一人物とは思えない、動くのも憚られる重々しさだ。
自分やクラスメイト、烏間にイリーナとは違う殺気のない純とした"圧"。殺さずとも人を服させる、支配を想像させる"圧"。
殺す意志こそないものの、その重みと共に刃を向ける先は彼女も変わらない。
だからこそ、恐ろしい。
誰かを"殺す"という意識を持たず、ただの"義務"として扱えてしまうことが。
以前から、彼女の人間らしさをふと見失ってしまうことがあったが、この意志を感じられない素養も起因しているのかもしれないと気付かされる。
見ているものは同じでも、始点から違う、根幹が全く違うのだとカルマは感じた。感じざるを得なかった。
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窓(プロフ) - 星咲夜空@スマホさん» コメントありがとうございます。糧とまで言われて本当に嬉しいです……！ 今までほどの更新頻度は保てないですがお付き合いいただけると幸いです！ (2021年9月4日 1時) (
レス) id: 1c42528565 (このIDを非表示/違反報告)
星咲夜空@スマホ(プロフ) - 更新ありがとうございます。この作品の更新が生きる糧です、これからも無理のない範囲で頑張って下さいませ！ (2021年9月4日 0時) (レス) id: 2efeb2cec1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：窓 | 作成日時：2021年9月2日 20時
