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「そ、今日みたいに一日授業以外でクラスメイトと過ごす機会なんて中々ないだろ？
……神崎さんはそういう、あからさまに壁を作るタイプじゃないと思うし、お互い気を遣いすぎて遠く感じるだけなんじゃないか？
せっかく同じグループになった二人が仲良くなってくれた方が、俺も嬉しいな」
「……私と神崎さんのこと、杉野君には直接関係ないのに？」
「たまに結構ズバズバ言うよな浅野さん」
関係なくないし、関係なくても俺はそっちのがいーんだって！ そう続ける杉野が空を仰いでいた視線をAに戻しながら苦笑する。文句のようでありながら嫌みの一つも感じられない言いように、Aはまた彼に羨望のようなものを覚えた。
杉野という人間は、どちらかというと彼自身が人に大きく影響を及ぼすようなタイプではない。裏を返せば、波風立たせず人の輪に入り込む才があるのだ。裏表のない性格と滲み出る人柄の良さからきているのだろうというのは、先の杉野との会話でまざまざと実感できた。
その人となりを、自分が持ち得ないことも。
「できるかなあ……私、杉野君みたいに特別明るかったり人当たりがいいでもないけど、ぐっ」
諦念をちらつかせたAの言葉が終わるや否や、ブレザー越しに彼女の背中にがつんと衝撃が走った。尾を引く鈍い痛みに手を後ろに回して摩っていると、引っぱたいた張本人までもがいってー、と呑気に手を揺らしている。しかし、痛がるのをすぐ済ませた杉野は驚いたままのAににっと笑みを浮かべた。
「浅野さんって意外と臆病だよな。こういう時はできるできないよりまずやってみることが大事なんだって」
「まずはやってみる、か……
……うん。確かに、そうかもしれないね」
杉野の方を少し見上げたAが、きゅっと唇を引き結んでからぎこちなく顔を綻ばせた。その笑みを象る前の僅かに歪んだ表情が、密かに杉野を訝せる。
前向きな助言を受け入れたと思い難い、諦念と悲愴を一滴垂らした薄暗い声色が靄のように溶けていく。常より一層人間離れした空気を帯びるクラスメイトに杉野は口を開こうとした。今何か言わないと、靄ごとAがどこかへ消えていきそうな気がしたから。
「もったいないよ！ 抹茶わらびが！」
しかし、杉野が彼女を掴む前に飛び込んできた声が靄を掻き消す。いつの間にか距離のできていた他の班員の輪の中で、甘味を愛するクラスメイトの悲痛な声が耳に入った。
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窓(プロフ) - 星咲夜空@スマホさん» コメントありがとうございます。糧とまで言われて本当に嬉しいです……！ 今までほどの更新頻度は保てないですがお付き合いいただけると幸いです！ (2021年9月4日 1時) (
レス) id: 1c42528565 (このIDを非表示/違反報告)
星咲夜空@スマホ(プロフ) - 更新ありがとうございます。この作品の更新が生きる糧です、これからも無理のない範囲で頑張って下さいませ！ (2021年9月4日 0時) (レス) id: 2efeb2cec1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：窓 | 作成日時：2021年9月2日 20時
