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低まった声が床を這い消えて数瞬、ちっと舌打ちがAの耳に入った。源は不良の中心に鎮座していたオールバックの不良だ。が、居場所を特定されたことに狼狽えこそしたものの、焦りは鎮まりかけている。
「……一人ボコったくらいで調子乗ってんじゃねえぞ。この人数差で何ができる？」
ざ、と埃を蹴り上げた不良が足を進めて近寄った。退く様子の全くないA達との距離はあっという間に縮み、彼女の眼前まできた男の手がその頤にかかり目線を合わせるように上向かせる。品定めするような視線に、無感動を決め込んでいたAの目元が一瞬引き攣って、伏せられた。
容易く手を出してくると思い知らされた少女が怯えを隠そうとしたように見えたのか、不良の声が些か機嫌を戻して言葉を続ける。
「さっきみたいな目に遭いたくなかったら残りの女置いて大人しく帰りな」
「────聞こえなかった？」
ばしん。骨太い指が手ごと弾かれた。皮膚を叩く音と声が室内を凍らせる。睫毛の隙間から、照明の僅かな光量で鈍く瞬く赤い目が覗く。見下ろしているはずなのに頭上から感じる重圧に、軽い痛みを訴えた手と共に不良が一歩後退った。
それが当然であるかのように、冷ややかな温度のままAの言葉が続く。
「赤羽君が言っていたでしょう？ 退院日引き延ばされたくなかったら大人しくしててくださいよ……それに、」
そこで小さく息を整えた彼女の目が、古びたソファに座らされているクラスメイトへを移る。苦い顔はそのままだが、その目から見える感情は彼女らに向けられたものではない。つい今しがた自分にしか聞こえなかったのであろう耳障りの悪い話のせいだ。
「……それに、神崎さんは貴方達とは違う」
名指しされた神崎、遅れて茅野が彼女の言わんとしていることに気付いて目を瞠った。
Aが聞いていた神崎の話を知らない四班の面々と、先の話を聞かれていたとは思わない不良達の理解が追いつかないうちに、Aが再び口を開く。
「貴方達のやってきた行為はわからないし知りたくもないです。でもね、少なくとも神崎さんは人の足を引っ張るような人じゃない
────私のクラスメイトを、馬鹿にするな」
「……おーおー言うじゃねえのエリート様が。あの女が昔何してたかも知らねえんだろ？」
不良の言葉に、神崎が俯きかける。が、
「だから、何？」
ふっと短く、緩く笑う穏やかな声色が、彼女の目を伏せさせなかった。
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窓(プロフ) - 星咲夜空@スマホさん» コメントありがとうございます。糧とまで言われて本当に嬉しいです……！ 今までほどの更新頻度は保てないですがお付き合いいただけると幸いです！ (2021年9月4日 1時) (
レス) id: 1c42528565 (このIDを非表示/違反報告)
星咲夜空@スマホ(プロフ) - 更新ありがとうございます。この作品の更新が生きる糧です、これからも無理のない範囲で頑張って下さいませ！ (2021年9月4日 0時) (レス) id: 2efeb2cec1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：窓 | 作成日時：2021年9月2日 20時
