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一番近い潜伏場所の候補はそう経たずして見つかった。入り口付近に停められたバンも逃げる際に少しだけ見えた車種と一致している、とは奥田とAの証言だ。
そのバンのすぐ近く、入口を塞いでいる見張りをどうするか、と車の陰で話し合う間もなく動いたのはそれまで先頭を歩いていた二人だった。
下校途中のように淀みない足取りで歩くカルマとAがあと数メートルで建物に入るところまできて、屯していた不良が見覚えのある制服に足を近づけた。
「てめえら……あの女共のツレだな？ わざわざイイ女まで連れてき」
不良の言葉は、そこで終わった。カルマは挑発も攻撃もしていないし、死角で待機していた渚達もその場から動いていない。
がご、と鈍い音と共に学ランが背を仰け反らせて綺麗にひっくり返る。
一番"彼女"の傍にいたカルマから見えたのは、背中から倒れる不良と、すらりとした脚を天に大きく振り上げるクラスメイトだった。
スカートが翻るのも厭わず、顎を真っ赤にして派手な音と共に地面に打ち付けられた不良を見下ろしたAがゆっくりと脚を下ろしながら口を開く。
「────人に、気安く刃物を向けるな」
肺を握り潰すような、それほどに呼吸を乱れさせる声だった。背中越しでも感じる威圧してくる厳粛然とした声色を聞く最中、カルマは男の傍で何かが光るのを見つけ、そう経たずしてAの言葉の全容を理解した。
男は、カルマ達の姿が見えた時点で背後に折りたたみナイフを忍ばせていたのだ。その刀身を出す時の鋭利な音はごく僅かなのだろうが、しっかりとAの耳には入っていた。抜かれる前に、不良の顎目掛けて爪先を蹴り上げることで先制したのだ。
────しかし、所詮は未熟な体の女子の一発だ。
「……クソ、中坊が調子に乗りやがって!!」
渚達を呼んでいる間に復活した不良が、手の届くところに転がったナイフを掴むと、怒り任せにAへ突き進んでくる。それでも彼女がさして身構える様子はない。
Aがしたのはたった二つ、スカートの皺を軽く伸ばすことと、右足を軽く引いて縦向きに足を開いたことだ。
引かない様子のAにカルマが異変を感じ動くが、怒号を上げた不良がナイフを振りかざす方が早かった。
「あんまイキがってっと……刺すぞこのアマ！」
が、
「刺す？ ……そんなつもりもない癖に」
ナイフを前に、赤い目が煽るように目を細めて、笑った。
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窓(プロフ) - 星咲夜空@スマホさん» コメントありがとうございます。糧とまで言われて本当に嬉しいです……！ 今までほどの更新頻度は保てないですがお付き合いいただけると幸いです！ (2021年9月4日 1時) (
レス) id: 1c42528565 (このIDを非表示/違反報告)
星咲夜空@スマホ(プロフ) - 更新ありがとうございます。この作品の更新が生きる糧です、これからも無理のない範囲で頑張って下さいませ！ (2021年9月4日 0時) (レス) id: 2efeb2cec1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：窓 | 作成日時：2021年9月2日 20時
