種 ページ28
.
M「翔君、今日ウチ来ない？」
S「いいの？あ、お土産とか…」
転校してきたばかりの僕の初めての友達。
M「ふふ手土産って。ホントに翔君って中学生？」
S「ま、松本君こそ//」
学ランが大きくはだけてネックレスを覗かせる彼こそ、中学生とは思えない色気に溢れてるのに。
M「今日、誰もいないから。」
S「んもう、松本君そんなのばっか」
M「そんなのってこんなの？」
数学の教科書を顔の前に開くと
隠れた僕の耳たぶを軽く噛んだ。
S「ひゃ//」
M「かーわい♪」
松本君は僕の生まれて初めての秘密の恋人。
でもきっと松本君は初めてじゃないと思う。
…
放課後、来週の球技大会の話やら学食のサンドイッチのパンがちょっと薄くなった話やらをしながら山道を登る。
松本君の家は日本酒の蔵元なんだそうで
坂を登りきるといくつかの建物が見えてきた。
M「…こっち。」
S「あ、うん。」
少し強引に手を引かれてきたのは古い蔵のような倉庫のような建物。
S「あの、こっちはお部屋じゃ」
M「発酵蔵って言って、こっちのが声しないから」
S「あの、今日は…」
小説や映画の恋人ってお部屋でお喋りしたり、少なくとも蔵にはいきなり行かないよね…
やっぱり、僕は女の子じゃないから？
まだ中学生だから？
発酵する種すら宿せないから？
M「翔君、大好き。」
薄暗い発酵蔵で種にならない行為をした後。
S「ここなら僕の種も芽が出たりしないかな…」
制服を直しながら呟くと
M「ん？なんか言った？」
松本君が優しく背中を払ってくれる。
優しい手に胸が余計苦しくなる。
S「ううん。あの…松本君のお部屋も見たいな」
そっと学ランの裾をつかむと
M「普通の部屋だよ〜鍵かかんねーし」
S「もう//鍵ないと困ることはもうしないの！」
M「ちぇぇ〜コーラでいい？」
眉を片方上げて笑う。
寒いし、本当は温かいのが飲みたいけどいいの。
大好きな松本君の
種も宿せないけどいいの。
S「うん♪早く行こ」
ちょっとでも可愛く見えるように
そばに少しでも長くおいてもらえるように
想いをこめて腕を絡めた。
きっと高校生になったら
僕ももっと大人の恋人っぽいお付き合いを
してもらえるようになるよね？
もっと君に愛されたいから。
もっともっと、僕がんばるね？
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 446人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆみ
作成日時：2017年5月29日 19時
