貴族のお漫才 ページ21
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時は平安、都の某所。
やんごとなき御方の館の前に
そっと止まった牛車。
烏帽子からのぞく眉も凛々しい殿方が降り立つ。
M「ヒン、プク、ヒン、プク…あっ間違えた」
姫の寝所の玉砂利の音が一瞬、遠ざかる。
S「おぃッ！松潤もーいいから早く来いよッ！」
御簾を蹴破って飛び出したのはなんと
櫻の香を焚きしめた衣を纏った姫君。
M「えーでもプクで入らないと縁起悪いし。」
その凛々しい姿とはうらはらに
手に持った
モジモジといじりながら寝所の庭の門の前に
止まってしまう潤の少将。
S「それ迷信だろ。」
M「んーでも何かスッキリしないし〜やっぱ、今日は一旦帰ってまた占いで良い日に出直し…」
S「だーかーらッ！お前どんだけ待たせんだよッ！オンナ側から催促の手紙出させるってな〜」
M「えっ！アレ催促の和歌だったの？」
S「名作だろがいッ！ま、オマエ顔は良いけどバカだもんな〜やっぱわかんなかったかぁ」
M「なっ！翔さんこそ！あーんな下手っぴな文字を解読するの大変ってニノも言ってたよ？もうちょっとお習字のお稽古しなよ」
S「お…お前、恋文を従者ごときに見せたの」
M「だってニノの方が読み書き出来るしぃ〜乳兄弟だから俺の分身みたいなもんじゃん」
S「乳兄弟って他人じゃねーか！お前だって字ぃ下手っぴだろ。つか上がれよ。ココさみぃ。」
都で一、二をあらそう美しい濡れ羽色の黒髪をくるりとふるわせて翔姫が御簾の向こうへ消える。
S「あ、干し芋食う？雅紀の田舎から送って来てさ。火鉢で炙ると美味いぜ〜」
M「干し芋…色気も素っ気も」
S「食わねーの？」
M「食うけど」
S「食うんかいッ！お前さぁ、オレだってこう見えて櫻井の大将の姫君よ？引く手あまたよ？さ来月までスケジュール埋まってるから、お前みたくモジモジのんびりしてたら智君ん所行くから。」
M「えっ！翔さん、智さんとも」
S「だってあの人の方が家柄いいもん。貴族あるあるじゃね。でも…」
翔姫の薄紅の衣がすっと左へ流れると
潤の少将の手を隠すように被さった。
S「お前バカだけどテクニックだけはあんだから、欲しかったらそっちで落としてみせろよ。」
M「言ったね？」
S「言ったよ？」
御簾の向こうの影がひとつに重なる。
いつの世も恋人の逢瀬に行われることはひとつ。
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作者名：ゆみ
作成日時：2017年5月29日 19時
