日なたの窓に憧れて (ページ8)

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美術館の窓ページ8

まさか年下の男の子に一目惚れするなんて。

あぁ、仏像の話ね。
誰だ？やっぱ櫻井そっちなんだって思った奴！

今日は法隆寺展の最終日。
いくつかのブースを素通りして彼のもとへ。

観音菩薩立像、別名「アイタタ観音」。
銅で造られた際、鎚が入った瞬間にアイタタと言った事からきているらしい。

その逸話通り、活き活きとした菩薩像は飛鳥時代の仏像の特徴である少年の体躯をしていて

ほんの少し左足を前に出して、ひねった腰がキュッとしまり艶めかしさを醸しだす。

大人になりかけた肩から下りるラインを前から後ろから、まだ筋肉のついていない薄っぺらな身体の横から眺める。

やや丸みの残る頬は「白鳳の微笑み」と呼ばれる少年独特のはにかんだ表情を浮かべて。

あいにく大学生で暇はあるが、金が無い俺はしばらく会えなくなる彼をためつすがめつ記憶に焼きつけた。

そうこうして名残惜しく展示ブースを出てエントランスに戻る。

カフェを併設したミュージアムショップ。
今までは素通りだったが、今日は最終日。愛しの彼のポストカードくらいなら買ってみようか…

本当なら大きな図版や模写の像なんかもあるはずだが、学生のバイト代ではちと厳しい。

ちらりとミュージアムショップの窓を覗いた瞬間、俺は目を疑った。

ポストカード売り場に立っている男性が。

左足を少し前に出してひねった腰。
Tシャツの上からでもわかる三角形のライン。

毎日眺め続けたそれと同じだったから。

ふらふらと吸い寄せられるように、ミュージアムショップに足を踏み入れ、男性の横に立ってポストカードの見本を手に取る。

げ。高っ。
なんでセット売りなんだよ～

俺が欲しいのは彼のカードだけなのに。

ふぅとため息をついて、見本を一度棚へ戻す。

すると隣りの男性が

M「なんでセットなんですかねえ」

と話しかけてきた。あ、観音様じゃないんだ。

少し気がゆるんで、話をすると男性も同じ大学生で彼のお目当ては夢違観音だという。

S「あの、じゃあシェアしません？」

思い切って声をかけた。

二人で割り勘してポストカードを買い、美術館を出て近くのコンビニで安い珈琲をちびちび飲みながら

S「松本君てアイタタ観音に似てるね」

そういうと

M「どこが(笑)でも櫻井君だけだよ。そんな話出来る友達。なんか嬉しい。」

白鳳の微笑みを彼が投げかける。

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