AMBD特別編〜朗読師 ページ44
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「春巻き３、酢豚１、それとスープまだ？」
A「今あがる〜！」
12月下旬とはいえ中華料理屋の鍋前は暑い。
若い頃は東京で一人暮らしをしてたけど
30をすぎてやっぱり実家へ戻ってきた。
年齢を感じる時って
見た目とか体力とかもあるけど
親父の背中が小さく見えた時にガツンときて。
親に頭を下げて、店を継ぐべく毎日中華鍋を振る生活に入った。
鍋を揺する音、揚げ油がはぜる音。
お腹の中にいる時から聴いてた音。
そんな音の間から突然。
「今週のイチメンは」
A「…え？翔ちゃん？！」
思わず振り返って店のテレビを見れば
A「やっぱ翔ちゃんだ。」
昔はピアスしてカラコン入れて
S「時代のハードパンチャーだから」
って女の子みたいに可愛い顔なのに尖ってた翔ちゃん。
画面の中の彼はセットされた黒髪に、高価そうなスーツに、声も低い大人のそれだけど
その人は東京時代の仲間の翔ちゃんで。
俺は声変わり前の翔ちゃんも知ってんだ。
よく試験前とか
S「違うだろ〜ちゃんと問題読めよ〜」
翔ちゃんが読むと無機質な数学の問題文でさえ
俺にとっては甘美な旋律に聞こえて
A「もっかいもっかい」
S「ん。ちゃんと聞いて？」
わざと何度もおねだりしては
放課後の教室でうっとりとしてた。
…そうか。
翔ちゃん、声で伝えるお仕事になったんだ。
すげー似合うな。
また黙々と鍋を振る。
…
ランチタイムが終わって
夕方の仕込みをはじめた頃。
「こんにちはー！まだやってますか？」
閉めたはずの入口から聞こえた声。
A「すいませーん！いま仕込み中で…」
S「お〜！雅紀だ〜！」
A「翔ちゃん？！えっ？さっき…」
S「うん。ニュース終わりで。おひさ〜」
確かに翔ちゃんが着てるのはさっきのスーツ。
A「春巻きならすぐ出来るけど…」
S「じゃ、それで。潤もいいよね」
A「キ…キングっ！いたの！」
M「誰がキングだ(笑)松本ですけど。ね？翔さん本当に中華屋してたでしょ？」
スッとその後ろから現れたのは松潤。
確か弁護士だったかな。
まるで自分ちみたいに翔ちゃんの腰に手を添えて格好よくエスコートしてる。
そうだ。そうだった。
あの放課後の教室には、もう一人いたんだ。
……すげー似合うな。
もしもあの時。
そう思い出を甘くも苦くも噛みしめられるのは
また年を重ねた証だ。
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*** Happy Birthday dear AM ***
大人の階段を登った君へ捧ぐ
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作者名：ゆみ
作成日時：2014年7月20日 14時
