本屋の窓 ページ23
S「最近なんかおすすめの本ってあります？」
新聞の書評も王様のブランチのおすすめも結局は新刊の出版社のおすすめ。どれも似たり寄ったりなんだよね…ハズレも多いし。
「あーそれならイイ所紹介してやるよ」
東山先輩がスーツの内ポケットからメモ帳を取り出して走り書きを寄越した。
松本書店。住所は街中から少し外れているから、蔵書が多いのかな？それともお洒落なカフェ付き？あ、昔の珍しい本とか。それも面白そうだ。
まぁ東山先輩のおすすめなら間違いないはずだから、金曜日の退社後に行ってみる事にした。
メモの住所で車を降りれば、なんて事のない普通の街の本屋だ。むしろこじんまりしているし、ウインドーに並んでいるのも普通の本屋と変わらないラインナップ。
店のウインドーからさらに中を見ると
小さな段ボールを抱えた男性がA4くらいの紙を持って、真剣な表情で本棚の間をウロウロしている。
時おり笑ったり、首をひねりながら本を戻したり…端正な横顔は意外にも表情豊かだ。
なんだか楽しそうに本を選ぶ男性に見とれていると目が合ってしまった。
M「いらっしゃいませ！ご注文ですか？」
正面のガラス戸が開く。
S「あ、友人の紹介でその…」
なんだかファストフードの店みたいな挨拶に面食らう。彼はお構いなしで
M「ではカルテにご記入をお願いします。」
え？病院？どゆこと？東山さーん！
俺の心の叫びが聞こえたのか、彼は微笑むと
M「ウチはお客様のお好みに合う本を一万円分お売りするサービスをしているんです。必ずお気に召した本をお選びします。」
自信満々に言い放った。
へぇ…。
A4の紙に、好きな作家と作品、職業や趣味などを書く。
M「…櫻井さん。世界遺産お好きなんですか。それと食…ご旅行は？」
S「休みがあればいきたいんですが、なかなかまとまった休みが…アジアとかが多くて。」
あれこれと本当に病院みたく会話して。
M「かしこまりました。では後日、櫻井さんのお宅におすすめの本をお届けしますね。」
なんだか狐につままれた気持ちで店を出た。
約一週間。
どんな本かな？とか、あの時窓から見たように今ごろ俺の事を考えて本を選んでくれてるのかなとか、ついニヤニヤと過ごした。
家に帰ると小さな段ボール。
彼からの俺の第一印象を尋ねるような気持ちでドキドキとガムテープをはがしにかかる。
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作者名：ゆみ
作成日時：2014年7月20日 14時
