日なたの窓に憧れて (ページ3)

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カフェの窓ページ3

その人はパンの耳が好きだ。

出勤前にいつも立ち寄るカフェ。

ニコニコと笑顔を振りまく雅紀さんとは対象的にその人は水色の小さな窓の向こうから一歩も出る事なく

ゆっくりとサイフォンの中で滴り落ちる珈琲を時おり横目で見ながら

手早く食パンの上にふんわり柔らかなたまごや
鮮やかな真っ赤なトマトや
みずみずしいレタスとハムなんかをのせては

すっとナイフを入れて
トン、と水色の小さな窓からカウンターに出す。

A「翔ちゃん、お待たせしました！レタスサンドです」

S「ありがとう」

微笑んで、緑の切り口にかぶりつきながら、またさりげなく水色の窓に目をやる。

あ、また食べてる(笑)

小さな水色の窓の向こうで、その人はサンドイッチの落とした耳をぼんやりとかじってる。

毎朝(！)俺が観察したところ、どうやら空腹というより無意識に手が伸びるらしく

たまに雅紀さんと目が合うと恥ずかしそうにうつむくのが可愛いんだ。

S「ごちそうさま！」

今日もうるわしのパン耳の君に見送られて、俺は会社へ急いで駆け出した。

…

そんなある日。

外回りの営業が案外早く終わったので、ちょっとサボるかと初めて昼間にあのカフェを訪れた。

白くペイントされた木の壁には一面に小さな鉢植えのグリーンが飾られていて…そんないつもの景色の中になんとパン耳の君のクックコート姿があった。

M「はぁい、お水どうぞ。」

え、この人グリーンとお話してる…？

S「あのぉ…」

恐る恐る声をかけると

M「あっ！翔ちゃんさん！…ってあのいつも雅紀がそう呼んでるから、その」

やっぱり可愛い人だ(笑)

S「ふふ(笑)翔、でいいですよ。櫻井翔です」

M「あ、松本潤…です。」

S「営業、してますか？」

M「はい。レタスサンド…ですか」

S「はい！」

昼休憩の雅紀さんもいない静かな店内で水色の窓ごしにパン耳の君、改め松本さんと初めて喋る。

人前が苦手な事、雅紀さんとは幼なじみな事…その間にぽつぽつ来るお客さんにあわてるから

S「貸して？俺運ぶよ」なんて。

M「あの…コレ」

レタスサンドと一緒に出てきたのは、スティック状のドーナツ？

M「あの…手伝ってもらったから」

このかたちって。

S「パンの耳、好きなんですか？」

前からの疑問をたずねたら

M「好きっていうか…はい」

照れくさそうにクックコートの裾をいじる彼の横で甘いパンの耳をほうばる。

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