学生寮の窓 ページ16
大学の敷地のはずれ、テニスコートの脇を抜けて、急な坂道を登ると古い団地のような建物が見えてくる。
「山風寮へようこそ！」
簡単な説明を受けたら、あらかじめ送っておいた自分の荷物と布団を抱えて部屋へ。
S「失礼しま〜す！」
「おっ！総代来たな。三回生の松岡。よろしく。そっち側、二人で使って」
S「あの僕、櫻井です」
「わかってるよ(笑)でも総代じゃん」
入試成績がトップだった俺は入学式でかなり目立ったらしく、他の先輩からもそう呼ばれてややうんざりしていた。
四人部屋の半分を松岡さんが使い、もう半分を俺ともう一人の新入生で使うようだ。とりあえず壁ぎわのベッドに荷物を置いて、外を眺める。
春の光の中、テニスの練習をする女子…テニスサークルもいいなぁ。
ぼんやりと暖かな日差しに身を投げ出していると、バンッと扉が開いて、男がズカズカ入ってくると反対側のベッドに荷物を置く。
S「あ。俺、同室の櫻井。よろしく。」
M「松本。名札出てたし。」
ナニこいつ！感じワルッ！
「松本〜挨拶くらいちゃんとしろよ。俺、しばらく外泊許可取ってるからお前ら仲良くな〜」
S「ご実家どなたか具合悪いんですか？」
「違う違う(笑)オンナの所だよ(笑)じゃあなチェリー君！」
松岡さんが去って行くと奴がクスクス笑って、窓枠に腰掛けると慣れた仕草で煙草に火をつける。
そっかぁ…大学生だもんな…ってお前も一年生じゃね？マジマジと奴を見つめるとますます笑いながら
M「チェリー君、かわいいね！別にみんな煙草も吸うし、女子ともつき合うでしょ。」
ナニこいつ！感じワルッ！
S「櫻井だ！その呼び方やめろよ！」
M「はいはい。あ、吸う？」
S「お、おぅ。」
はじめての一本を口にくわえて、ドキドキしながら煙りをむせないように吸いこむ。
ただ苦い味だけが舌を刺すのに堪える。
…話題が無い。
S「あ、あのさぁ。サークルとかどうする？」
M「パス。」
速攻で返事が返ってくる。こいつ友達付き合いとか悪そうだもんな〜
M「俺、奨学金もらっててさ。仕送りも無いからバイトしなきゃ」
S「そうなんだ。」
M「…教師にどうしてもなりたいんだ。」
そうはにかんだ彼の頬にポツンとニキビ。
やっぱりお前もぴかぴかの一年生じゃないか。
S「煙草はお肌に悪いぜ(笑)」
グイグイッとそれを押してやった。
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作者名：ゆみ
作成日時：2014年7月20日 14時
