部室の窓 ページ12
O「翔くん…(笑)直角とかは上手いんだけどね〜なんで美術部入ったの？」
智君が後ろから俺のイーゼルをのぞいてなかなかの毒舌を無邪気にはく。
S「いーじゃん別に//気が散るからアッチ行ってよ！ 」
俺が美術部を選んだのは…
ここからが一番良く見えるから。
バレーボール部の練習。
阿部コーチの怒鳴り声。あ、相葉先輩がジャージのチャック開けた！二宮君と彼が強烈なレシーブ特訓をうけはじめる。
土ぼこりの中で右に左に。いつもなら意固地になってボールに食らいつく彼の様子がおかしい。
コーチも先輩も他の部員も気が付かないみたいだけど、毎日彼ばかりを見てる俺にはわかる。
あっ！
そう思った時には
O「翔くん、お片づけ〜！」
智君の言葉を背に駆け出していた。
…
表向きは幼なじみの智君がいるからという理由だった。
でも本当の理由は楽しそうに時に真剣にバレーボールをする松本君…を美術室の窓から見た瞬間、目が離せなくなったから。
東大特進コースの俺とスポーツ強化コースの松本君では同じ学年でも授業も違うし、バレンタインにクラス全員からチョコをもらっちゃう松本君は俺の事なんて知らないだろう。
だけどたぶん。
この学校で一番君を見続けてるのは俺なんだ。
…
息をきらして保健室へ。
阿部コーチが振り向くと
「櫻井委員長か。ただの貧血みたいだ。お前、家まで送ってくれると助かるんだが。」
もうすぐ総体前だから練習を中断出来ないのだろう。
S「はい。わかりました」
にっこり優等生スマイルで応えた。
初めて近くで見る眠った松本君の顔。
へぇ…口元にホクロあったんだ…
まじまじと見つめていると
M「ん…アレ？え？君…」
S「貧血だって。阿部コーチが帰っていいって」
M「そ、なんだ…櫻井君、来てくれたの？」
S「俺の事、知ってるの！？」
M「うん。いつも練習見てくれてるじゃん。あの窓から」
S「ごめ…なんかヤダよね」
M「なんで？」
松本君がまっすぐにこちらを向く。
M「俺もあの窓の櫻井君の事いつも見てたよ？」
トクン。
痛いくらいの鼓動を感じた瞬間。
O「翔く〜ん！鞄持って来たよぉ。もうちゃんとお片づけしていきなよ！」
智君の声がして、はじめて松本君と顔を見合わせて笑った。
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作者名：ゆみ
作成日時：2014年7月20日 14時
