日なたの窓に憧れて (ページ1)

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校舎の窓ページ1

公園に面した図書館。大きなガラス窓から木漏れ日が降り注ぐ。

書架をなぞっていた指先を離して、光合成をするように窓の向こう側の緑に向かって大きく伸びをした。

文筆業のはしくれをしている俺はどうしても夜中心の生活でなかなか太陽の光を浴びる事が出来なくて。

さっきから探している本はやはり無いらしい。しかし専門書のアーカイヴではピカイチの評判のこの図書館、書庫の方にならあるかもしれない。

トントンと階段を下りて受付に。
いつもここには目がくりっとして長い黒髪の女の子がいるんだ。勇気がなくて話した事無いけど、今日こそはお茶にでも！！

ゆるやかにカーブした階段をあと三段下りたら、長い黒髪の…

え？ちっがーう！！

ごくせん？尾崎豊？窓ガラス壊してた？

確かに黒髪の

(男にしては)長い髪

(尾崎にしては)くりっとしてる目が

非常にギラギラとこちらを睨んでる。

ネームバッジには「松本」。

あ、尾崎では無いのね。

うーん…また出直して彼女の出勤を待つ？いやいや、それじゃ締め切り間に合わない。

うしっ！！

気合いを入れて受付に立つと

S「あの、お茶でもいかがですか？」

何故か、きのう死ぬほど練習したフレーズを口に出していた。ああ！条件反射！！

ヤツはきょとんとしてこちらを見た後、ギラギラなまま

M「…別にいいけど、本は借りないの？」

と可愛くない笑顔で言った。

…

これが彼との出会い。

書庫から専門書を何冊か探しがてら

M「あんた医者？」

S「医療翻訳をしてるんだ。」

M「だからこの本ね…そうだよな～医者が昼間っからこんな所でぷらぷらしねえよな」

S「お前だってこんな所で働いてんじゃん」

意外とギラギラしない会話が続いてさ。

…

んで。何故か俺はいま、元ギラギラ君と夕暮れの立ち飲み屋で、レモンティーではなくレモンサワーをかたむけている。

M「校舎の窓？壊してないよ？あんた人を見た目で判断しすぎ。俺、こう見えて優等生だったんだから」

まぁ、この図書館の司書が務まるのだからエリートなんだろうけど。

S「だってお前目が怖いんだもん」

M「あー俺、近視なの。つか、お前じゃなくて潤。call me 潤、ね」

S「外人か。俺はあんたじゃなくて翔。」

M「ふーん。もしかして柴田翔の？」

S「あ、そうそう！！さすがだな！」

M「よろしくな。翔さん」

差し出された手を俺はがっちり握りしめたんだ。

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