魔法少女幸福論。 (ページ3)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:2,242 hit

一幕。ページ3

『いってきます』

　そう言って一人で家を出て
　一人で通学路を歩く。

　私はいつも一人だ。

　いじめられてるわけでもない。

　嫌われてるわけでもない。

　ただ友達が少なく、
　ただ地味で近づきにくいだけなのだ。

『おはよう、野良くん』

　いつも塀の上に座っている野良猫の野良。

　私が挨拶を交わすのはこの子くらいである。

　最近やっと、にゃーんと
　返事をしてくれるようになった。

.

　ただ、そんな私には1つだけ
　人に知られてはならない秘密がある。

「あっ、帽子が…」

　急に強い風が吹いたからか
　目の前の女の子の帽子が空を舞った。

　
　私だって届かない距離だ。

　でもそんなのは、
　こう唱えれば解決する。

『マルベリカ・マギスペリカ・ソリタリカ』

　そうするだけで、自然と帽子が降りてくる。

　それを手にとって女の子に渡すと
　嬉しそうに受け取って走っていった。

　そう、それが私の秘密。

　魔法が使えること。

　
　大概のことが一振りで叶う
　退屈な奇跡。

　今みたいな助けのキッカケも、悪戯も
　何だって叶う。

　そんな嘘みたいな本当が
　私の秘密。

　長年夢に見ていた
　『魔法少女』という職業。
　