No.58 ページ9
それから2時間後。
シャルが、冷たいタオルを目に当てるよう手渡してくれた。恥ずかしい事に沢山泣いてしまって、酷い顔をしているだろう。シャルに見られるのはちょっと恥ずかしい…いや、だいぶ恥ずかしい！
メイク直そうかな、でも隠せるかな…。あ、そうだ！私にはドッペルメイクという念があるじゃないか！と閃いた時、クスクスと笑い声が頭上から声がした。
「A、百面相してるよ？」
『え！あ、ちょっと考え事を…』
「君、気づいてないみたいだけど、丸2日寝てたんだ。みんなすごく心配してるよ」
『え！』
2時間くらいだと思ってたのに、まさかそんなに経ってるなんて…。
『ごめんなさい。みんなに迷惑を…』
「ストップ！誰もそんなこと思ってないよ。むしろ悪いことしたって団長言ってたよ」
『え？あの団長さんが!?』
「Aの中で団長ってどういう人なの？」
彼は苦笑いした後、安心した表情になって、ほんとに目覚めてよかったと言ってくれた。
『心配かけてごめんね。来てくれてありがとう。あの時の声はシャルだったのね』
「あの時？」
『寝ている間、夢を見てたの。昔の…叔母との記憶。その時、私を呼ぶ声がして戻らなきゃって思ったの』
あの時は誰の声か分からなかったけど、今ならあの声はシャルのものだったとはっきりわかる。
呼んでくれてありがとうと言うと、彼はほんのり頬を染めて笑顔でこういってくれた。
「君が目覚める為に、俺がお役に立てて嬉しいよ」
ーーーーーー
『でも出来れば、こんな不細工な状態で会いたくなかったわ…』
「それは俺だって同じだよ。ついた時には1日半は経ってたから、汚かったし！」
『シャルは別に変じゃないけど、私は髪も顔もボロボロで不細工だし、こんな可愛くない服だし…不細工だし…』
「不細工言い過ぎ！そのままでも十分だよ！」
『お世辞なんていらないわ！』
「お世辞じゃないよ！」
お互い声を荒らげて睨み合う。そのやり取りがおかしくて、どちらともなくクスリと笑いあった。
それと同時にノックする音が聞こえた。
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作者名：ぱん | 作成日時：2020年6月17日 17時
