1話目 ページ2
『ん………』
目を開けると、そこにはいつもの天井があった。
真っ白で、殺風景な天井だ。
しかし、もう私にとっては見慣れた光景である。
そりゃ毎朝見ているから、慣れるのは当たり前だけれど。
『おはよう』
誰も居ない部屋の中で挨拶をする。
この挨拶に関しては、癖のようなものだ。
特に意味も無いが、とりあえず挨拶はするようにしている。
たっぷり寝たせいかいつもより軽い(と感じるだけの)体を起こし、ぐーっと伸びをする。
時計の針は、7と6を指している。
現在の時刻は、午前7:30のようだ。
『そろそろ朝食の時間だな……』
鍵を開けて部屋から出て、食堂に向かう。
「おはようなの！」
部屋から出てまず最初に出会ったのは、庭師のエマ・ウッズ。
彼女はいつも笑顔で、愛嬌もよく、皆から好かれている存在だ。
「今日はよく晴れているから、庭のお花も喜ぶなの！」
庭師、というだけあって、彼女はよく庭の花壇の手入れをしている。
彼女が世話をする花はどれも綺麗に咲き、世話をしている光景をちゃんと見ていない私でも、彼女がどれほど花に対して丁寧に扱っているかということが、目に見えてわかるのだ。
『この前言ってた花はもう咲いた？』
「もう少しで咲くなの！もしかしたら今日咲くかも……！咲いたらAにあげるなの！」
咲いた花を想像しているのか、柔らかい笑顔になった彼女を見て、こちらまで心が暖かくなった。
エマと他愛もない会話をしていると、食堂まではあっという間だった。
『おはよう』
「あら、おはようA。
昨日はぐっすり眠れたかしら。」
そう言って大きな鍋に入ったスープをかき混ぜている彼女は、医師のエミリー・ダイアー。
彼女は医師であり、試合で出来た傷なんかは彼女の手にかかればすぐ治る。
おまけに料理も上手く、サバイバー達の食事は主に彼女が担当している。
彼女が作る栄養満点の食事は、どれも美味しい。
『ああ、ぐっすり眠れたよ。試合で疲れていたからかな。』
それは良かった、と微笑む彼女からスープを受け取り、席に着いた。
『いただきます。』
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作者名：れあちーず。 | 作成日時：2021年8月29日 15時
