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*
けど俺の言葉はさらに彼女は泣かせることになってしまった。
「嘘つき…なんでそんなこと言うの？とりあえず好きっておけば私が紫耀の所に行くと思った？
馬鹿にしないで…」
信じてもらなかった。
そりゃそうだよな、って。だって俺今までずっとAに辛い思いをさせてきた。
そんなやつに好きって言われても信じられるわけない。
「あんなの嘘で言われたって嬉しくないよ…」
やっぱり俺は何をしてもこの子を傷つけてしまう。
涙声の彼女に心がズキズキと痛んだ。
俺の気持ちがAに負担を掛けているならもう言えない。
「なら、分かったよ。終わりにしよっか」
終わりになんかしたくないけど、そう言うしかなかった。Aがそれで救われるなら。
本当はどんな手を使ってでもAを引き止めたかった。
会って話せばきっと彼女は折れて俺と一緒にいることを選んでくれると思った。
でもそうしなかった。いや、できなかったのはもうAのことを苦しめたくなかったから。
Aのことが好きだと気づけたから、俺といることで彼女の笑顔が奪われるのは嫌だった。
好きな子にはずっと笑顔でいてほしい。
もう俺のことで泣いてほしくない。
岸くんといて、Aが笑顔でいられるならもうそれでいいかなって思えた。
今までごめんね。本当にごめん。
最後までAへの後ろめたさでいっぱいだった。
電話が終わったとき、携帯がフローリングに落ちる鈍い音だけが聞こえた。
俺はどこで間違えたかな。
君からの想いを受け取らずに拒んでいれば、君が傷つくのは最小限だったかもしれない。
俺だって、愛されることのよろこびを知らずに済んだのかもしれない。
けど、それでもAに会えてよかったって思えるんだ。
花火大会の日、来年も行こうって俺が言って
Aは本気にしてなかっただろうけど、俺は叶えるつもりだったよ。
Aが喜んでくれるなら叶えたかった。
これからもAが望むことならなんだってしたいよ。けどその役目は俺じゃないんだもんね。
遅かったな。遅すぎたよ。
もっと早く気づけていたら愛を持って君のことを抱きしめられたのに。
「好きだよ…Aが好きだ」
君がもう俺のところに来ないって分かってる。
俺はただ好きでいたい。
これからは君だけを想っていたい。
君が俺を好きでいてくれたように。
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作者名：來
| 作成日時：2020年12月13日 19時
