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優太さんは私の言葉に驚いているのか目をパチクリとさせている。
「なんだよ…急に」
「そーゆうの、簡単に言っちゃ駄目だって」
さっきまでお酒のせいで酔っていたくせに真面目な顔をして真面目なことを言い出す。
「簡単じゃないです…。私優太さんとのことたくさん考えたんですよ。本当にそうなれたらいいなって思ったから…」
思ったから、ああやって言った。
自分の言ったことがどういうことなのかなんて分かってるし優太さんだって意味が分かっているからこの反応なんだろう。
「正直今でも時々、紫耀とのことを思い出しちゃうんです。そんな自分がもう嫌で…優太さんのことしか考えたくないのに…って」
過去に囚われ続ける自分が憎い。
優太さんの悲しませることもしたくない。
「優太さんでいっぱいになりたいんです」
そう望むことが正解なんだと思った。
目を閉じて自ら口づけをしようとした。
たしかに唇同士が合わさったけど
優太さんの手が頬に添えられて結局優太さんからしてくれたのだと気づいた。
2度目だった。
塞がれてしまえばもう弱音など出てこない。
ただしっとりとした柔らかさを感じるだけだ。
「紫耀を思い出すと辛い？」
「はい…」
「…辛いならもう忘れよう」
熱の帯びているその瞳は私の顔までも熱くさせる。
私は迷うことなく頷いた。
優太さんの言うことは正しい。
それを確認した優太さんに体を持ち上げられて優しくベッドへと運ばれた。
「俺がAを好きでいるから」
優太さんが好きでいてくれるならもうそれでいい。それで私は幸せだから。
ゆっくりと押し倒されて、今目に映るのは優太さんだけ。
優しい。本当にキスまで優しい人。
最初はただ触れるだけだったのに次第に吸い付くように変わっていき、自然と口元がだらしなくなってしまう。
舌が絡み合うと鼓動が大きく跳ねた。
曖昧な関係を終わらせるにはちょうどよかった。
奪ってほしかった。心も体も。全部を優太さんだけのものにしてほしかった。
私は紫耀しか知らないからいけないんだ。
紫耀との日々が未だに忘れられないのは紫耀が初めての人だから。ずっと特別だったから。
きっと、それだけの理由。
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作者名：來
| 作成日時：2020年12月13日 19時
