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「これ…お水飲んでください」
優太さんの部屋に着く前にコンビニに寄って買ったペットボトルをキャップを外してから渡した。
「あ〜ごめ…ありがとう」
ゴク、ゴクと喉仏が動くのを見て咄嗟に何故か恥ずかしくなってしまった。
「あの…気持ち悪かったりしません？」
「それは平気」
「ならよかったです…」
どことなく優太さんの元気がないように思えた。
「何かあったんですよね？」
「え？」
「いつもこんなになるまで飲まないから…。だから何かあったのかなって…」
優太さんは困ったように笑って目線を下にずらした。
「悩み事とかあれば聞きますよ」
「ん…ないよ」
「ほんとですか？」
「…Aには内緒」
内緒、か。
「そうですか…」
言いたくないってことだよね。無神経だったかな。
でも少しぐらい話してくれたっていいのに、って優太さんの気持ちも知らずにそんなことを思ってしまった。
優太さんがうつむいたままでこっちを見てくれないから私ももう帰った方がいいのかもしれない。
「A」
その声に反応して優太さんに顔を向けると
ぎゅう、と抱きしめられた。
いつもより高い体温とアルコールの匂い。
「優太さん、どうしたの？」
「…どうもしてない。なんか理由がないとこうしちゃいけないの？」
そんなに寂しそうな声を出すのはどうして？
「そんなことないです」
私も優太さんに腕を回した。
「俺はさ…」
「どうしたらいい？」
「え…？」
「どうしたらAの紫耀への気持ちが消える？」
彼の名前を聞いた瞬間、息が止まった。
だって急なんだもん。
質問を理解するのもそれに答えるのも今の私には難しかった。
「俺はまだ駄目？」
「Aのこと…ほんと好きなんだよ」
「優太さん…」
私のせいだ。私がいつまで経っても優太さんの気持ちにちゃんと応えられないから優太さんが嫌な思いをしているんだ。
「待つって言ったけど早く俺だけを見てほしい…。好きになってもらいたいんだ」
付き合うという段階に踏み込むことをこれ以上躊躇してはいけない。って何度も思った。
「ごめん…俺まじ酔ってんね…」
「謝るのは私の方です。待たせてばっかりでごめんなさい」
「私、優太さんといる時間が好きなんです。心が落ち着くし、もっと一緒にいたいって思ってます」
優太さんと視線が絡み合ってトクトクと鼓動を感じる。
「ねぇ優太さん…
私を全部優太さんのものにしてほしいです」
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作者名：來
| 作成日時：2020年12月13日 19時
