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目が覚めて自分が今保健室のベッドで横になっているということに気がついた。
寝起きのわりには妙に頭がスッキリとしている。
途中まで楓と一緒にいて、それで意識が遠のいていったところまではなんとなく覚えているけどそこからの記憶はない。
どうやってここまで来たんだろう。
楓が運んでくれたの？
楓のことを思い浮かべていると、
足音が近づいてきた。
「あ、起きた？体どう？」
「楓…。うん、さっきより全然良い。まだちょっとお腹は痛いけど」
ならよかったよ、そう言ってベッドの横にあるイスに座る楓。
楓の顔を見てから、視線を下にずらすと私の横に小さなペットボトルとホッカイロが置いてあることに気づいた。
ちゃんと確認して見たら、それはココアだった。しかも私が一番好きなやつ。
「これ…」
「あ〜…それAの、ね…」
「楓が買ってくれたの？」
「いや…うん、そう…」
歯切れの悪い答え方に違和感を覚えた。
「ありがとね。ホッカイロも」
「ううん、」
「あ、ここまで運んでくれたのも楓だよね？ごめんね迷惑かけて…」
「いいって…」
ふと、髪の毛がボサついてないかが気になって髪に指を通した。
そのときに明らかに私の普段使っているシャンプーなどとは違った香りがした。
ドクッと1度大きく心臓が動くのを感じた。
私はこの香り、匂いを知っている。覚えている。本能的に絶対忘れられないものだ。
どうして？という疑問とともに、今度は自分の肩に鼻を近づけて息を吸った。
やっぱりだ…。
「なんで…」
「A？どうしたの」
「匂いがする…」
「匂いって？」
間違えるわけがない。
二人ピタリとくっついて一つになる瞬間が自然と思い出される。嫌なのに、わざとじゃないのに。あの日々が頭の中を支配する。
「紫耀…」
「紫耀のだよ…どうして」
「A…」
「ねぇ…もしかして紫耀なの？私を運んでくれたの」
楓は目を逸らした。
怖い。本当のことを知るのが怖いけど、知りたい。教えてよ。
まだ分からないけど、普通に過ごしていたら髪にも服にも彼の匂いは残らないもの。
「そうだよ…。平野。平野がAのこと…」
「意味分かんない…」
私の今の状態を一言で表すなら、混乱している
というのが一番合っているのかもしれない。
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作者名：來
| 作成日時：2020年12月13日 19時
