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一旦保健室を出て、学内の売店でAが好きだと言っていたホットココアとホッカイロを買った。
それらを持って戻ると、成海も帰ってきていた。
「それAに？」
「そうだよ」
成海は何か言いたげだった。
「あのさ…さっき岸先輩がいたの」
「え、岸くん？」
「うん。今空きコマだったらしくてさ…たまたま見ちゃったんだって…」
なにを？ってわざわざ聞かなくても流れてきに俺がAを抱えていたところを見てしまったんだと思う。
「そっか…」
「それでまぁちょっと状況を説明しといた」
「岸くんはなんて？」
「Aのこと心配してた…」
そりゃ心配するよな。
けどきっとそれだけじゃないと思う。岸くんは内心俺に対して怒っているはずだ。
俺なんかがAの側にいることをよく思うわけがない。
岸くんが今一番Aの近くにいるべき人なんだから。
「俺がいたら岸くんここに来にくいよね」
「そうだね…」
「ならもう帰るから」
俺は成海に手に持っていたものを託した。
「Aが起きたら渡してあげて。あ、ココア冷めちゃうかもだけど」
「…了解」
「あとさ…Aには全部秘密にしといて」
「全部って？」
「俺がここまで運んだこともそれを買ったのが俺だってことも、全部」
成海は首を縦に動かしてくれた。
「いいけど、どうして？てかそのうちバレるよ。岸先輩だって知ってるんだし」
「大丈夫。成海が黙っといてくれれば平気だよ」
「意味分かんない…」
きっと岸くんは優しいからこそ俺のことを言わないと思うんだ。
「Aは俺が関わったって知ったらきっと悲しむから、だから言わないでほしい」
あの日、電話の向こうで泣いていたAのことを思い出す。
「…分かったよ」
「ありがとね成海」
「あのさ平野ってもしかして…Aのこと」
成海は言葉を詰まらせた。なんとなくその続きは分かった。
「心配しなくていいよ。もうほんとにAに関わらないから」
成海が納得してくれたかどうかは分からないけど、
俺は再びここから出ようとした。
「平野…！」
「ん？」
「Aのこと、ありがとう」
「うん。じゃーね」
俺はあの場にこれ以上いることが許されないから、去ることしかできない。
俺と違ってそれが許される岸くんが本当に羨ましい。
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作者名：來
| 作成日時：2020年12月13日 19時
