五月。 ページ10
「城が開くのは、今日から三月三十日まで。それまでに鍵を見つけなければその日を持ってお前らはもうここへは入れない。」
「み、見つかったら？」
初めて聞く声がして、オオカミ様が声の方向を見る。こころも顔を向けると見られるのが耐えられない、というように大袈裟に「ひぃっ」と悲鳴を上げた男の子が階段のてすりの影に隠れた。
――小太りの丸い手が恐る恐るといった様子で階段の端からのぞく。おどおど、先を続けた。
「もし、見つかって誰かが願いを叶えたら、もう鏡とここは繋がらなくなるの？」
「『願いの部屋』が開いた時点でお前たちのこのゲームはおしまいだ。その場合は三月三十日を待たずして、この城は閉じる。」
オオカミ様が頷く。
「ちなみに、毎日城が開くのは日本時間の朝九時から午後五時まで。だから、午後五時までにはその鏡を通って必ず家に帰ること。これは絶対に守らなきゃいけないルールだ。…もし、その後まで城に残っていた場合、お前たちには恐ろしいペナルティーがある。」
「ペナルティー？」
聞こえ覚えのない、高い声が聞こえた。声優みたいな、日常生活で聞くにはすこし、違和感のある声。
声の方向を見れば、髪をボブみたいにして、ベージュのパーカーとデニムを着た眼鏡の女の子。
声のイメージとは正反対に本人は案外、女の子らしくない見た目だった。
その女の子の声にオオカミ様はけろっと告げる。
「シンプルな罰だ。狼に食われる。」
「え。」
思わず声が出た。
周りを見ればほぼ全員がこころと同じように口を開けていた。
視線がオオカミ様に集まる。
食われるって、それは、つまり、あなたに食べられるってこと？
そう、聞きたくて聞きたくてしょうがない。
でも、聞けない。
もし、そうだなんて返ってきたらこころはもう、絶対にここには来れない。
みんなも同じ気持ちのようで、何も言わないけれど恐怖とか、不安とか、そんな目で静かにオオカミ様を見つめている。
ひんやりと冷たい沈黙が場を支配していった。
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怜(プロフ) - トロイカさん» 本当ですね！？気づくの遅れてすみません…修正しました！ (4月4日 20時) (
レス) id: b646ea4538 (このIDを非表示/違反報告)
トロイカ(プロフ) - 全部で8人では？ (2月14日 21時) (レス) @page11 id: ccf39fbb9a (このIDを非表示/違反報告)
7Tw2ErnmNI22864(プロフ) - ちょうど昨日金ローの録画をみて、こういうの読みたいなあって思ってました！つぎのお話も楽しみにしてます！！🙏🙏 (2月14日 20時) (レス) id: 28c0945122 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：怜 | 作成日時：2024年2月9日 21時
