五月。 ページ9
「いや、喜ぶ喜ばないじゃなくてさ。」
こころがここにきてからずっとゲーム機を弄っていた男の子だ。分厚い眼鏡のレンズの奥の目つきは悪い。
「単純に意味がわかんないっつってんの。いきなり家の鏡が光ってここと繋がって？意味分かんないだろ、こっちだって混乱してるわけ。ちゃんといちから説明してよ」
「ふふん、ようやく口をきき始めたな、男子」
オオカミ様が笑う。
「男子は女子に比べて打ち解けるのに時間がかかるからな。女子が早々に話し出すというのに、だいぶ出遅れたな。せいぜい頑張ってくれたまえ」
オオカミ様がバカにするように言って、眼鏡の男の子が不機嫌そうに眉間にシワを寄せてオオカミ様を睨む。だけどオオカミ様は動じない。
「定期的に選んでおるのだよ。お前たちだけじゃない。これまでも何回か、迷える赤ずきんちゃんをこうやって定期的に城に招待してきた。――願いが叶った赤ずきんちゃんが過去に大勢いる。おまえたちはラッキーなんだよ」
ふん、と自慢げにオオカミ様が鼻を鳴らして説明すると、誰かが立ち上がる気配がした。
「――帰っていい？」
階段の上段に座ってさっきからずっと黙っていた男の子だった。ひょろっとして背の高い、静かそうな男の子。
男の子にしては色の白い顔で、鼻の頭あたりにそばかすが散るのを見て、『ハリー・ポッター』に出てくるロンみたいだなぁとこころが思っていると
「帰るな！！！！」
オオカミ様の怒号が響くとともに奥から「アオーーン」とまるで狼の遠吠えのようなものが聞こえた。
空気がビリビリと震えてビクッと体が引くこころの前で他の子達もたちも立ちすくんだように動かず、ただ目を見開いていた。
立ち上がったロンみたいな男の子も目の前に空気の塊を受けたように胸をそらして、そのまま立ちすくんだ。
「最後まで説明させろ。…今後ここに来るか来ないかは説明を聞いてから考えろ。」
オオカミ様がみんなを一回しして睨む。――お面のせいで表情がよくわからない顔で、睨む。
その動きで、ロン似の男の子はなんだか諦めたように、溜息をついてもう一度階段に腰を下ろした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 36人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
怜(プロフ) - トロイカさん» 本当ですね！？気づくの遅れてすみません…修正しました！ (4月4日 20時) (
レス) id: b646ea4538 (このIDを非表示/違反報告)
トロイカ(プロフ) - 全部で8人では？ (2月14日 21時) (レス) @page11 id: ccf39fbb9a (このIDを非表示/違反報告)
7Tw2ErnmNI22864(プロフ) - ちょうど昨日金ローの録画をみて、こういうの読みたいなあって思ってました！つぎのお話も楽しみにしてます！！🙏🙏 (2月14日 20時) (レス) id: 28c0945122 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：怜 | 作成日時：2024年2月9日 21時
