五月。 ページ5
萌ちゃんが居なくなったことを確認して、届け物を取りに行こうと思ってつけっぱなしのテレビの光が鬱陶しいから消そうと思って頭を上げると
「え」
テレビはついていなかった。
代わりにテレビの横のこころの姿見がまゆばく光り輝いていた。呆気にとられて思わず近づくと発せられている光は内側からのようだ。
深く考えずに表面に手を触れた。
触れてから熱かったらどうしようと今更ながらに思ったが、いつもの鏡と同じ冷たい感触だった。
だけど、問題はそこじゃなかった。
「きゃっ？！」
すこし力を入れるとあったはずの鏡の感触ではなく、なにか柔らかいもののような…いや、そこには空間があるような。
感触が何もなかった。
驚いて手を引き抜こうとすると見えない向こう側から引っ張られて体全体が鏡の中に引きずり込まれる。
たすけて、そう思ったけどあまりの事態に喉が引きつってうまく言葉が出なかった。
********
「…ねぇ、起きて」
こころの横で声が聞こえる。
倒れた床の冷たい感触が右頬にある。
「ねぇ起きてってば！」
それとは反対側から幼い子供特有のちょっと高い声がまた、聞こえる。
首を振ってゆっくり体を起こせば、目の前に異様な子がそこに、立っていた。
「起きてくれたね、安西こころちゃん」
狼の顔。…ちがう、縁日で売られているような狼のお面をつけている、女の子。
これだけでも異様だが、そんなものをつけているのにも関わらず結婚式などに行くようなレースやフリルがたくさん施された赤いドレスを身にまとっていた。
混乱とともに周りを見渡せば真正面に城が建っていた。
西洋の童話に出てくるような、それはもう大きく立派な城が建っていた。
「おっめでとうございまーす！」
呆然とするこころに狼面の女の子は楽しそうに声を上げる。
こころがその女の子を見ないまま、女の子はこう、続けた。
「安西こころ様！あなたはめでたくこの城のゲストに招かれましたーーー！！」
その声とともに目の前の城の鉄格子が重々しく開かれる。
まるで、こころを誘うように。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 36人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
怜(プロフ) - トロイカさん» 本当ですね！？気づくの遅れてすみません…修正しました！ (4月4日 20時) (
レス) id: b646ea4538 (このIDを非表示/違反報告)
トロイカ(プロフ) - 全部で8人では？ (2月14日 21時) (レス) @page11 id: ccf39fbb9a (このIDを非表示/違反報告)
7Tw2ErnmNI22864(プロフ) - ちょうど昨日金ローの録画をみて、こういうの読みたいなあって思ってました！つぎのお話も楽しみにしてます！！🙏🙏 (2月14日 20時) (レス) id: 28c0945122 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：怜 | 作成日時：2024年2月9日 21時
