五月。 ページ16
しん、とした空気がなんだか気まずくなりはじめたとき。
「終わったのか？」
「っ、わぁ！？」
いつの間にか、部屋の入口にオオカミ様が立っていた。
さっきもなにもない空間に消えていって、今度は音も、気配もなく現れた彼女に、皆は驚きの表情を浮かべて視線を集める。
「なんだ？そんな化けものを見たような顔で驚くなよ」
オオカミ様が言った。
いや、充分化け物っぽい行動をしているんだから、化け物だと思っているんだけど、と思ってみんなで顔を見合わせたけれど口に出す子は誰もいなかった。
「では、覚悟はできたか」
彼女が聞いた。
今度は誰も顔を見合わせなかった。静かに、オオカミ様を見つめていた。
覚悟。
それはつまり、鍵を探して願いを叶える覚悟、ということだろうか。
自己紹介が終わってそれぞれの名前と個性が少しわかったところで、改めてこの城と鍵のことを考える。
鍵は、一つ。
願いを叶えられるのは一人だけ。
全員が同じことを考えているのがわかる。その気持ちを見透かしたように、オオカミ様が言った。
「では、今日はもう五時になってしまうから、解散。」
「明日から、ここに来て鍵を探すなり、散策するなり、仲間でありライバルの赤ずきんちゃんたちと過ごしてもらうのも構わない。」
くるり、とオオカミ様が踵を返そとしたところで何かを思い出したように「あ、それから」と言葉を付け足した。
そして、その言葉が甘く、優しく、こころの胸を揺らした。
「城の中には、各自のための部屋を一室ずつ用意したから、好きに使っていいぞ。部屋の前にプレートが掛かっているから、明日以降確認しておけ。」
オオカミ様がそう言い終わった後すぐに
アオーーーーーン
と、前より大きく狼の遠吠えが聞こえ、それと同時にアンティーク調の大時計が大きく鐘の音を響かせる。
「…五時五分前のお知らせだ。急いで帰れ。初日から狼に食われたくなければな。戻り方はここに来たのと同じく鏡をくぐるだけだ。」
オオカミ様のその声に皆が慌てたように鏡の前に立って、くぐってゆく。
「KOKORO」
とかかれた鏡にこころはぎゅっと目をつぶって両手を突き出した。
柔らかいような、あったかいような。そんな不思議な感触がこころを包む。
次に目を開けたとき、こころは部屋の中にいた。
こころの部屋の時計はもう、五時になるところだった
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怜(プロフ) - トロイカさん» 本当ですね！？気づくの遅れてすみません…修正しました！ (4月4日 20時) (
レス) id: b646ea4538 (このIDを非表示/違反報告)
トロイカ(プロフ) - 全部で8人では？ (2月14日 21時) (レス) @page11 id: ccf39fbb9a (このIDを非表示/違反報告)
7Tw2ErnmNI22864(プロフ) - ちょうど昨日金ローの録画をみて、こういうの読みたいなあって思ってました！つぎのお話も楽しみにしてます！！🙏🙏 (2月14日 20時) (レス) id: 28c0945122 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：怜 | 作成日時：2024年2月9日 21時
