其の八 ページ9
人喰いの白虎―――敦は太宰へ襲いかかる。
しかし、ひらりと太宰は身を躱し、虎は壁へと激突する。
壁材や絵具がパラパラと落ちる煙の中、ゆらりと鋭く光る獣の双眸。
『あらら、人のときの見た目と反して剛健で…』
そうAが呟けばその声に反応したのか、次はAの方へと襲いかかる。
『異能力。“時掌りし乙女”』
次の瞬間、Aの姿が消え、標的を見失った虎はそのまま太宰の方へと突っ込んでゆく。
腕を振り下ろし、太宰の後ろにあった木箱を一撃で破壊する
太宰「こりゃ凄い力だ。人の首くらい簡単にへし折れる」
『こんな時まで自_殺?嫌なんですけど、虎に襲われたぐちゃぐちゃの死_体を処理するなんて』
Aはいつの間にやら虎の後ろに居て、木箱の上に優雅に座っている。
異能で自分の時間を早め、スローモーションになった世界で悠々と虎の攻撃を躱したのだ。
太宰「……何時も思うんだけどAちゃんの異能って狡くない?」
『どの口が言ってるんですか』
命の危機が迫ってるとは思えないくらい、いつものように会話をする太宰たち。
その余裕そうな態度が気に食わなかったのか虎は激高した様子を見せ、太宰を壁へと追い込む。
太宰「おっと」
その好機を見逃すわけもなく、虎はすかさず太宰に飛びかかる。
太宰「獣に喰い殺_される最期というのも中々悪くない、がAちゃんが嫌だと云っているし――」
虎の顔がもうすぐそこだという時、太宰は虎の鼻先へと触れる。
太宰「それに君では、私を殺せない」
瞬間、虎の体が光に包まれどんどんと小さくなっていく。
太宰「私の能力はあらゆる他の能力を触れただけで無効化する。」
虎はまたしても姿を変え、人であった敦の姿になる。
敦は気を失っているらしく、そのまま太宰の元へと倒れ込むが
太宰「男と抱き合う趣味はない」
と太宰が非情にも床へ転がす。
『可哀想。酷いなぁ、ポイ捨てするなんて。太宰さんってそういう処ありますよね』
ひょい、と木箱からAが降り立つと
国木田「おい!太宰!A!」
外から国木田の声がして、彼は倉庫の中へと入ってくる。
太宰「あ、遅かったね。虎はきちんと捕まえたよ」
太宰があれあれ、と床に転がる敦を指させば
国木田「!その小僧…じゃあ其奴が」
『ええ。虎の異能力者。でも返信しているときの記憶がなかったんでしょうね。』
国木田「全く―、次から事前に説明しろ。肝が冷えただろう。」
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作者名:怜 | 作成日時:2023年11月2日 16時