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其の六 ページ7

敦「い、いいい嫌に決まってるじゃあないですか!だって、其れってつまり餌ってことじゃあないですか!」

太宰「…報酬」

ぼそりと太宰が呟いた言葉にぴくりと反応を示す敦。

太宰「さてさて…国木田くんは社に戻ってこの紙を社長に渡してくれ給え。Aちゃんは私に同行」

『え!?』

国木田「な、三人だけで捕まえられるのか?まず、情報の裏を取ったほうが――」

国木田の声を制すと、自信あり気に指を組む。

太宰「善いから」

敦「厭々!僕はまだ参加するなんて一言だって言っていないですからね!あ、あくまで参考のために訊きますけど……ち、因みに報酬っていくらほど…?」

『こんくらい?』

Aがぽい、と紙切れを敦に渡すと敦はそっと其の紙を開いて中を覗き――

敦「こここ、こんなに!?」

驚愕と歓喜が混じった悲鳴を上げた。

***
倉庫――。

月明かりの下、太宰は愛読書「完全自_殺読本」を読み、Aはぼうっと月を眺め、敦は体育座りで怯えたように体を縮こまらせていた。

『…月は何時でも、何処から見ても綺麗だね。』

敦「…本当に虎が現れるんでしょうか」

Aの小さなつぶやきに呼応するかのように弱弱しく敦が言葉を紡いだ。

太宰「現れる。…何、心配しなくて善い。虎が現れたとしても敵じゃあ無いさ。こう見えて私達は武装探偵社の一隅だからね」

太宰がAに視線を移すとAは興味なさげに無心で月を見上げ、月に手を伸ばす仕草を見せる。

其れはまるで幼子の姿にも見え、なんとなく切なげな表情をする彼女から敦は視線を逸らした。

敦「…凄い、自信ですね…。僕なんかずっと孤児院で駄目な奴って云われてて。その上今日の寝床も明日の食い扶持も知れない身で。こんな奴が何処で野垂れ死んだって誰も気にしない…」

敦「いや、いっそ虎に喰われて死んだほうが…」

『…太宰さん、そろそろじゃない?』

月を見上げながらAが話しかける。

ガタン!!

同時に倉庫の奥で何かが倒れたような音が響く。其の音に敦は大袈裟な程に体を跳ねさせる

敦「今、其処で物音が――!」

太宰「そうだね」

関心のない様子の二人に焦ったように敦は声を荒げる。

敦「き、きっと奴ですよ!太宰さん、Aさん!」

太宰「風で何かが落ちたんだろう」

敦「ひ、人喰い虎だ、僕を喰いにきたんだ」

太宰「座り給えよ。敦くん。虎はそんなところから来ない。」

敦「如何してそんなこと判るんです!?」

『"変"だから。』

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作者名: | 作成日時:2023年11月2日 16時

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