???????_其の一 ページ16
二人の少女が居る。
藤色の髪を靡かせて揃いの服に身を包んだ彼女らは目を見張るほど瓜二つだった。
二人の少女が向き合って二言三言交わせば面白くてたまらないというように顔を見合わせ、くしゃりと綻ばせる。
一人の少女が顔を上げる。其れにつられるようにもう一人も顔を上げる。
遅れて顔を上げた少女の両の目色は異なって神秘的に光を反射する。
二人の違いは目の色くらいでまるで鏡の妖精が悪戯をして映した虚像の目色を変えたのだろうと思うほど、そっくりだった。
彼女らの口が動く。同じ動きだ。口が閉じると白髪の男性が現れて少女らに近づく。
父親だろうか、少女らに男が腕を広げると二人は競争するように男に駆け寄る。
同じ瞬間に二人が男に抱きつくと、男は二人を抱きしめた。
男が此方を見る。鮮明な少女たちとは違って男の顔は靄がかかったように見えない。
ふと、少女たちが影に呑まれる。
男は直ぐに其れに気づいて、手を伸ばす。ただ、暗い影で少女たちの姿が見えない。
一度、男は影から目を離す。淡い光が男の視線の先にある。光に手を伸ばして掴むと、影が少し淡くなり、一人の少女だけうっすらと見えた。
影が、そのまま少女から離れる。少女の隣に淡い影を残して。
男は影を見て少し躊躇うが、少女を手招く。
淡い影とともに男の手を取った少女の姿は心做しか大人びて見える。そして、男と光ともに遠くへ消えていった。
黒い影の中で、翠と碧が弱々しく光に反射する。
ぽたぽたと水音がする。
影の中から声がする。
??「……如何して?」
幼い子供の泣き声。
影に強い光が当たって、取り残された少女の姿が顕になり、少女の足元の影が濃くなる。
少女は光が眩しすぎるというように目を隠す。金銀妖瞳が怪しく、影を落として光った。
??「…矢っ張り約束なんて、守られないじゃない」
ぽつり、と少女が片割れの消えていった虚空を見つめて呟く。
??「……私と一緒に居てくれるんじゃなかったの?如何してあの子だけ扶けられたの?」
誰も居ない場所で少女は誰に聞かせるでもなく呆然と呟いた。
??「全部、……だいっきらい」
少女ごと、影が飲み込んで此方へ向かってくる。
怪物が大きく口を開けるように襲いかかる。其の中に少女が睨みつけるような、誰かが憎くて憎くてたまらないといった表情をして手を伸ばす。
??「許してなんてあげない。Aのこと」
『…織鈴…』
少女が手を伸ばした先はAの首。
力が込められ意識が――
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作者名:怜 | 作成日時:2023年11月2日 16時