其の五 ページ15
国木田「……如何した、A。小僧の入社が不満なのか?何をそんなに膨れている」
敦「……えっ」
国木田の声に先程の表情とは一転、明らかに傷ついた顔をAに向ける敦。
太宰「へ?君だって敦くんを推薦していなかったかい?」
『え、ち、違います!敦くんの入社は嬉しい。ちゃんと…けど』
慌てて弁解するが表情が晴れないA。
『…その、只…いや…何でもないです。』
気まずそうに目をそらして、あるき出そうとするAだったが、其の腕を太宰が掴む。
太宰「隠し事はいけないよAちゃん。敦くんが我々の仲間になった以上、情報共有は必要だろう?」
じっと真っ直ぐにAの目を見つめる太宰。
最初の方こそ見つめ返していたAだったが、だんだんと気恥ずかしくなってきたのか、目をそらした。其の顔はほんのり色づいている。
『………もん』
太宰「…え?」
聞き取れず太宰が訊き返せば、Aは真っ赤な顔をあげて太宰をにらみつけるようにして叫んだ
『だから!福沢さんと出会ってまだ2年の太宰さんが「一任する」なんて云われてて嫉妬しただけです!』
太宰「…え」
『何!?なんか悪い!?』
国木田「……ふっ」
空気感に耐えれなくなった国木田がつい吹き出せば、周りでも一斉に笑いが起こる。
太宰「そういえば、Aちゃんも乱歩さんに劣らず社長が大好きだったね」
『五月蠅い!其の口縫いますよ!』
恥ずかしさから憤慨するA。ぽかんと立ち尽くす敦に気づいて、慌てて太宰に飛びかかろうとしていた姿を直す。
『あの、ごめんなさい、なんか…。敦くんの入社、心から歓迎してるから安心して。御目出度う』
誤魔化すように笑い、爆弾に寄りかかる。
『あ、忘れてた。片さないと』
敦「そ、そういえば…僕の試すためだけにこんな大掛かりなことを…?」
『うん…其処まで大掛かりって云うほど大掛かりじゃないけどね。この爆弾なんてすぐ偽物って判っちゃうから。』
敦「え……?」
『ほら此処、この製造番号は本物にはないんだよ』
ちょいちょいと爆弾に掘られた製造番号を指差すA。
敦「そ、そんなの判りませんよ、何処で知ってくるんですか!」
『あー…私は前職でちょっとね。ん、まぁ此処でもかなり役立つ知識だし』
Aの何気ない言葉に顔を青くする敦。
太宰「織鈴ちゃんの云う通りだ、こんなことで驚いてちゃ身がもたないよ?」
にこりと笑う太宰に顔色をまたも悪くする敦だった
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作者名:怜 | 作成日時:2023年11月2日 16時