【ツイステ】赤の女王の片割れ【男主】

8.jealousy ページ8

寮に戻り、部屋に鍵をかけ、布団に包まる。
一度零れてしまった涙は意志とは裏腹にとどめなく溢れ出る。

寮内でリドルとすれ違った時に呼び止められたが、それも無視して部屋に籠った。
とにかく今は人に会いたくなかったのだ。

「僕は…リドルじゃないのにっ……セシル･ローズハートなのに……」

感情に身を任せて何かを壊したかった。
自分を傷つけてしまいたかった。
しかし自分にそんな度胸などない。
それをしてしまった後のことの恐怖の方が優り、結局泣くことしか出来なかった。

向かいにある鏡にふと目をやると、そこには酷い顔をして泣いている自分が映っている。
ルーク先輩が褒めてくれた目からは未だに涙が出ており、制服はぐしゃぐしゃだ。

《リドルは流石だな。》

《リドルは偉いね。》

《ほら、リドル。遊ぼう？》

みんな口を開けばリドル。
いつだって1番はリドル。

「でもリドルの事嫌いになんてなれない…っ」

この世で僕を僕として見てくれるのはリドルたった1人だから。
僕はリドルを否定できないしちゃいけない。

《もしもリドルに何かあったら貴方がリドルなのよ。》

この世でいちばん嫌いな言葉。
母から言われた言葉。

僕はリドルじゃないのに。

そう思っているはずなのに、

『もしも僕がリドルだったら。』

そんなことをもう何回考えただろうか。

いつだって僕のこの心を締め付けるドロドロとしたものの中心にはリドルがいる。

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