1話 ページ1
気付いたら森の中。マジワロス。
人間って唐突な事、特に非現実的な事に巻き込まれると思考が停止するのだなぁ、と遠い目をしながら思った
今日も今日とて制服に着替えて地獄に行くのだとため息をついていたのに、外へ一歩踏み出した瞬間、自分の視界が、意識が、世界が、絵の具のようにぐにゃぐにゃと混ざり合った気がして、意識を取り戻したら森の中だったのだ
一周回って冷静になってしまった自分の脳内で、事の経緯を模索するも意味がわからないとため息を吐くだけだった
誘拐にしては変なやり口だし、何かの事件に巻き込まれているならとっくに何かのアクションがあっただろう
本当に、まるでいきなり別の世界に放り込まれた気分だ
そこら辺から聞こえてくる獣の鳴き声に、自分の脳内で警告が鳴り響く
このままここにいたら、熊が出てくるかもしれない
なんとなくそう思ったAは、震える足で出来るだけひらけた場所を選びながら歩み出した
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いくら歩き続けても景色が変わらない
Aは内心悪態をつきながら先ほど転んでしまったのを思い出していた
なんだか体が安定しない
自分のイメージ通りに体が動かず、支えとして利用しようとした枝が空ぶったり、転んだ時咄嗟に前へ出した手がやけに地面に着くまで短かったような…
幸い怪我はしなかったが、雨が止んだ直後なのか地面はぬかるんでいて、当然泥がついてしまった
特に目立つのが服。肌の部分は払えばまあまあ綺麗になったけど、服はどうしようもなかった
そして、不愉快な泥汚れを見下ろしている時、ふと自分はこんな服を持っていただろうか？と気が付いた
違和感を辿っていけば自分の外見そのものが違うとわかるのに、Aは受け入れ難くて無理矢理その思考を頭の片隅に追いやり、起きたばかりで無意識に混乱しているのだと片付けた
足を止めると波のように疲労が押し寄せてきて、足首の痛みが「限界だ」と訴えかけてくる
しゃがんでふくらはぎをマッサージしていると、視界の隅に何かの足が見えた
到底人間とは思えない色をした足に、Aの手は自然と止まり、そろそろとその人物を見上げる
それは落ち武者のような男で、空洞のように見える目から怪しい光を朧げに放っていた
人間の形をなんとか成している男と目があったような気がする
「お…オワタ」
振り下ろされる刀、無感情に見下ろす男
その光景はAのトラウマベスト3に容易に刻み込まれたのだった
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作者名：夢夢努努 | 作成日時：2018年8月26日 17時
