天使の嘲笑2【rbr】

本能的な話【side：rbr】 ページ9

「ああ、ありがとうございます」

何度も出版社に持ち込んでは方向性を変えろと冷たい視線を向けられ、それでもコンセプトは変えずに書き続けてようやく、OKが貰えた。

賞に応募するとかなんとか言われるくらい評価してもらって、これは成功だと確信した。

ビギナーズラックでも、会いに行く口実が欲しかった。


ヒトは唯一理性的な行動が許された生き物だからそれを最大限活かすべきなのだけど、恋愛になると突然、本能的になる。

少し文学的。


ところで、会いに行って俺はどうするか。
会いたくなかったんだけど、二度と来ないでね、サヨウナラなんて言われたら立ち直れない癖に、それが怖いのに。

気色悪いな、俺。

それを少しずつ自覚していってて、彼女のことよりも仕事のことを考えるようになった。


『気持ち悪』

いつかの俺が放った言葉。
そっくりそのまま返される気がする。

何故か今の俺でも同じことをする気がして、いまいち自分の感情を理解しきっていないような気がする。

愛とは何か、なんて考える時もあるけど、具体的な答えは無いという結論にたどり着くのがオチ。


確かに彼女を愛しているようで実は、愛し合うフリをするのが苦しくて、楽しかった。

はじめて人間になれた気がしていた。
厨二的な話ではなくて。


未だに何も知らない、Aから色々なことを教わった癖に成長していない自分に気がつく。

このまま一生解らないな。

「……ばいばい、なんかなあ」


久しぶりに感情的になって、泣いてみた。
何度あの子の前で泣いてしまったのだろう。そんなことを思い出して苦しくなった。
じゃあ何度、あの子は俺の前で泣いたんだったか。

会いたいは愛なのだろうか。


毎日から少しずつ華やかさが失せていく。

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